トラベルウォシュレットと私

「私の携帯は、おしりが洗えるタイプです」
こんなキャッチコピーで90年代後半にデビューしたのは、今回紹介するTOTO トラベルウォシュレット。名前の通り、TOTOが90年代後半に世に送り出した携帯用おしり洗浄機です。
こういった製品はそれまでも決して珍しいものではなく、通販カタログなどに掲載されているのを何度か見た記憶がありますが、有名なトイレ関連メーカーはこの分野に進出しておらず、中小メーカーの製品ばかりでした。
そんな中、トイレのトップメーカーTOTOが満を持して、おなじみの「ウォシュレット」ブランドを冠して投入したのがこの製品です。これはそれなりのインパクトがあったのか、これ以後、INAXや松下電工などの有名トイレメーカーも負けじと対抗製品を投入し、市場は一気に活性化しました。そしてそれ以後、現在に至るまで発売当時と変わらない形で販売され続けている息の長い製品です。
実は私もこの製品を購入し、現在も時々使っております。今回は私のこの製品に関する思い出について、少し書かせていただきたいと思います。


最初にこの製品の広告を見た時は「素晴らしい製品が出た!」と感激したものです。当時既にウォシュレットの魅力に取りつかれていた私は、「どこでもウォシュレットの快適性を享受できる」というこの製品のコンセプトに大いに共感しました。当時はまだ公共施設などへのウォシュレット設置が今ほど進んでいなかったため、その思いは一際強かったと思われます。
その後数年が経ち、この製品のことを忘れかけていた頃、イギリスへの留学が決まりました。お尻を洗う装置にお目にかかるチャンスがほとんどない国で長期間過ごすとあり、渡航前に一抹の不安を感じていたところ、ふと、この製品を思い出したのです。早速近所の家電量販店に行き、購入しました。
いざ、手にしてみるとサイズ感は広告で見た印象と差はありませんでした。作りもしっかりとしており、安っぽさはありません。電池と水を入れ、いざ試運転を…。
「おっ!」
期待以上のものがありました。携帯用ということでそれほど期待はしていなかったのですが、豊富な水量としっかりした水圧で、想像以上の洗浄力を示しました。ノズルも洗浄力重視の3穴のものと、ソフト洗浄用の5穴のものが取り換え可能になっており、この辺りにもTOTOのこだわりが感じられました。
これからの生活に対する不安も消え、イギリスでの生活を始めた私。トラベルウォシュレットの使用感もなかなかで、快適な生活を送っておりました。
しかし、ある日を境にこの製品を使う頻度が減り、最終的には紙で処理を行うようになってしまったのです。毎回使用前にはタンクに水をいれ、使用後はノズルを洗い、しまう。この一見簡単そうに見える一連の行動が次第に面倒に感じられるようになってしまったのです。
1~2週間の旅行などであれば、旅行という非日常感もあいまって、こういった一連の動作を特に面倒を感じることなく行えると思いますが、現地で数か月生活となると、生活の一部にこの動作を組み込むのが私にとっては億劫になってしまったのです。また、この製品を携帯していない時に用を足さざるを得ない状況もあり、それが積み重なることで次第に紙による処理も苦ではなくなってきたことも要因でした。商品名に「トラベル」とついている訳がなんとなくわかった瞬間でした。
使用感は快適で非常に良い製品であるため、今でも海外など、おしりを洗えない地域への旅行時には携帯し、重宝しております。
発売から十数年が経ち、すでに日本国内の旅行ではこの製品の必要性はなくなったといっても過言ではないほど、ホテル・公共施設への温水洗浄便座の普及率は高くなっています。
欧州地域など海外への本格的な展開を発表したTOTOのこれからの究極的な目標は全世界にウォシュレットを普及させ、トラベルウォシュレットを無くすことかもしれないな、とこのコラムを書きながらふと考えた新年のひと時でした。
それではまた。

衛生陶器愛好家の、トイレ巡礼