今回は前回に引き続き、TOTOのネオレストハイブリッド、INAXのREGIO、そしてパナソニックのアラウーノというタンクレストイレ新機種3台を各方面から比較してみたいと思います。今回比較するのは温水洗浄機能の洗浄力、デザイン、そしてその他各部位の機能性の3点です。果たしてタンクレストイレ界の頂点に立つのはどの機種となるのか…。
<洗浄力>
2大メーカーの商品がそれぞれの魅力で拮抗しています。ネオレストハイブリッドはTOTOならではのワンダーウエーブ洗浄により毎分最大0.43Lという少ない水量でもしっかりと洗い上げてくれます。また、マッサージ洗浄やムーブ洗浄におけるノズルの制御も3機種の中で最も精度感があり、それが快い洗浄感につながっています。水流やノズル制御などの「技」で洗浄力を高めている印象です。
対するREGIOはというと毎分最大1.4Lという豊富な水量でずっしりと重厚感のある洗浄感を堪能できます。この水量の差はお尻に当たった瞬間からはっきりと実感でき、ネオレストハイブリッドの洗浄感がいささか線の細いものに感じられるほどです。ただし、ノズルの制御に関してはネオレストハイブリッドと比較して甘さを感じる部分が多く、ワイド洗浄(ムーブ洗浄のINAXにおける呼び名)でもノズルが動いている実感が薄いなどの事象が確認できます。技のTOTOに対してこちらは重厚感のINAXといったところでしょうか。
この点において少々残念だったのはアラウーノです。TOTOの様な技もINAXのような大水量もなく、洗浄性能に関してはやや平凡な印象を受けました。かつておしりシャンプーやスポット洗浄などの意欲的な洗浄機能を提案してきたパナソニックですが、今回のアラウーノでは洗浄機能については特に訴求ポイントとはしていないようです。
そんなわけでこの勝負、技のネオレストハイブリッドと重厚感のREGIOの一騎討ちとなるわけですが、重厚な外見から想像される通りのずっしりとした洗浄感を味わえるREGIOの方が製品イメージとの整合性という点でより好ましいのではないかという結論に達しました。よって各モデルの評価は以下の通りになります。
ネオレストハイブリッド:4.5点
REGIO:5点
アラウーノ:3点
<デザイン>
三機種ともタンクレストイレらしい無駄なラインを省いたシンプルなデザインが特徴ですが、その表現は三者三様です。
ネオレストハイブリッドは3モデルの中で最もシンプル・クリーンを体現したデザインとなっています。極力継ぎ目が廃されたボディはサイドから見るときれいな楔形となっており、スタイリッシュな印象です。ハイブリッドエコロジーシステムを採用しないネオレストAシリーズとの識別ポイントが本体のロゴのみという点が難点でしたが、Aシリーズがカタログから落とされたため、今後新たに取り付けられる方にはあまり気にならない点かもしれません。また、今回のマイナーチェンジで丸みを帯びたマイルドなデザインとしたRHタイプも追加され、インテリアに合わせてデザインテイストの選択が出来るようになりました。同時に、ファッションデザイナーの山本寛斎氏とのコラボレーションにより、便ふた部のカラーバリエーションが豊富に選べるようになりました(AHシリーズのみ)。これにより、これまで難点であったカラーリングの乏しさが解消され、清潔感あふれるデザインに遊び心を加えることが可能になりました。
REGIOはタンクレストイレの売りであるコンパクトさをあえて捨て、威風堂々とした大柄なボディが特徴です。直線的にまとめられた中にも随所に曲線が取り入れられていて、それが優雅な印象を作り上げています。そしてなんといってもREGIO最大の特徴といえるのがカラーバリエーションです。ベーシックなホワイトに加え、イナスカラー以来の復活となるブラックが用意されているのです。しかも今回はこれまでにない艶消し仕上げのブラックです。艶消しの風合いを実現するために釉薬を新たに開発するなどコストを掛けていることもあり、ホワイトボディに比べ9万円アップの53万円というXstage IMを超える破格のプライスとなっておりますが、実物を前にするとその重厚感・美しさに「その価値はあるかも」と感じさせられます。特にブラックに関しては公式サイトにあるようなこだわりの空間に置かないと場違いに感じるほど置く場所を選ぶ便器ですが、そう感じさせる国産の便器はTOTOのエクセルシア以来十数年ぶりなのではないでしょうか。
アラウーノは工業デザイナーの深澤直人氏の手によるデザインとあって、代表作のau INFOBARや±0の製品に通じるようなシンプルかつやわらかい印象のデザインとなっています。曲線を取り入れたシルエットは日本の住宅にもよく合うデザインと思います。本体色はホワイトのみで、便ふた部にカラーバリエーションを展開しているのも家電メーカーのパナソニックらしい新しい試みで、特に木目調となるペールナチュラルとダークセピアの2色はヨーロッパでよく見られる木製便座をほうふつとさせ、全体に漂う暖かみのある印象が一層引き立ついい色だと思います。
3者それぞれの魅力があり甲乙つけがたいところではありますが、これまで「コンパクト、シンプル」な表現が多かったタンクレストイレのデザインに「高級感」という新しい価値観を持ち込んだINAXのREGIOの提案性に満点をつけたいと思います。次点には家電メーカーらしい遊び心が感じられるアラウーノを、もう少し新しい提案がほしいという意味でネオレストハイブリッドは3位とします。
ネオレストハイブリッド:3.5点
REGIO:5点
アラウーノ:4点
<機能性>
ネオレストハイブリッドはタンク式と水道直圧式の併用によって、従来タンクレストイレが設置できないケースが多かった高層階への設置を可能にしたり、水たまり面の水位を下げることによって跳ね返りを防げる機能など、便器のトップメーカーならではの基本性能の高さが魅力です。また、便器・ウォシュレット部のふちなし構造や汚れのつきにくい陶器の採用など、アラウーノの全自動お掃除に負けじと掃除のしやすさにも配慮されています。ウォシュレット機能についても、前述の洗浄力の高さに加え、リモコンのボタン配列もわかりやすく、使いやすさへの工夫もなされています。全体的に、便器のトップメーカーならではのきめ細やかな工夫が感じられる製品という印象を受けます。
REGIOに実際に使用してみて、まず実感するのはその便座の快適性です。便座の幅が広めで、体重が分散しやすいのか長時間座っていても疲れにくいのです。重厚なデザインを裏切らない重厚な座り心地が魅力です。また、ネオレストにも搭載されている便座部分が持ち上がり、掃除しやすくする機能ですが、ネオレストが手動なのに対し、REGIOではこれが電動となっており、この点でも一クラス上の感覚を醸し出しています。ネオレストと比較するときめ細やかな工夫が施されているという印象は薄いですが、重厚感・高級感を感じさせる演出が随所に見られるのが魅力です。
アラウーノはなんといってもガラス繊維系の新素材の採用と全自動お掃除機能がハイライトです。汚れをはじくため水アカが付きにくいという新素材については、陶器に対してどの程度アドバンテージがあるのかまだ未知数かと思いますが、水と泡の力で全自動で掃除をしてしまうという機能は非常に訴求効果があると思います。洗浄に使用するのが市販の台所用洗剤という点も末永く機能を使用するには重要なポイントだと思います。以前パナソニック(当時は松下電工)は「おしりシャンプー」機能付きのクリーンシャワレを発売したことがありますが、これが思うように普及しなかったのは「おしりシャンプー」専用のシャンプー剤が必要だったことも大きかったのではないかと思います。今回のアラウーノではその反省が活かされているのだろうと思います。その他ではパナソニック製一体型便器の伝統であるアームレスト付きの機種がラインナップされている点や、音楽再生機能付きの機種では立体的な音が楽しめる点などが特徴的です。便器にこれまでにない新機軸を持ち込んでいる点が印象的な製品です。
この比較で最もインパクトがあるのは「全自動お掃除」という飛び道具を持ち込んだアラウーノかと思われます。しかし、全体的な機能性という視点での比較となると、洗浄方式からウォシュレット機能まで、これまでのノウハウが凝縮された感のあるネオレストハイブリッドに一日の長があると考えます。REGIOはどちらかというときめ細やかな気配りというよりは重厚な雰囲気を味わう点に重点が置かれている印象を受けたため、この比較では3位とします。
ネオレストハイブリッド:5点
REGIO:3.5点
アラウーノ:4.5点
<総合評価>
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3者のこれまでの評価をレーダーチャートにまとめました。ネオレストハイブリッドは機能性とエコ度で、REGIOは洗浄力・デザイン・官能度でそれぞれ評価5となっています。機能的でエコだが心に響く要素にやや欠けるネオレストハイブリッドと、その逆を行くREGIOというように、お互いの不得意分野を補完し合うような結果となっているのが興味深いところです。アラウーノについては洗浄力で評価3となってしまったのが残念なところですが、その他はバランスよく高得点を得ています。松下電工、松下電器時代に開発された意欲的な洗浄機能をブラッシュアップさせた上で搭載すればすぐれたオールラウンドモデルになる可能性を秘めているといえます。
それではここで、これまで行ってきた5項目の比較の総合得点を算出します。ここで最高得点となった便器が3者の頂点に立つ便器となります。果たして…
1位:REGIO(22.5点)
2位:ネオレストハイブリッド(21.5点)
3位:アラウーノ(20点)
タンクレストイレの頂点に輝いたのは22.5点を獲得したINAX REGIOという結果となりました。大柄なブラックのボディ、静音性を追求した洗浄方式など、効率最優先のタンクレストイレ市場に新しい風を吹き込んだ点が勝因ではないかと思います。次点のTOTO ネオレストハイブリッドは節水性や各種機能のきめ細やかさなどトイレのトップメーカーTOTOのノウハウが息づいた製品という印象を受けましたが、外観デザインにその充実の中身に相応しい提案性がもう少し欲しかったと思います。パナソニックのあらうーのについては、特に温水洗浄関係の機能において、完成度がトイレメーカー2社の領域に達していないように感じました。しかし、新素材の採用や全自動お掃除機能など家電メーカーならではの新しい試みは特筆すべきものがあり、製品全体としては、TOTO、INAXの2社寡占状態を打ち破る第三勢力の誕生を世に知らしめるインパクトと実力を内包した製品であると考えます。
こうして3社の製品を比較して参りましたが、全体を通して甲乙の付けがたい、レベルの高い戦いであったと思います。アラウーノの出現で今後のタンクレストイレ市場はTOTO, INAX, そしてパナソニックの三つ巴の戦いとなり、今後も熱い市場となりそうです。これからのタンクレストイレ界の進化に思いを馳せつつ、今回のコラムを締めたいと思います。
それではまた。