【追悼】山城新伍はいつも面白い人の側にいた!

 テレビ時代劇「白馬童子」や、バラエティー番組での軽妙な司会で知られた俳優の山城新伍(やましろしんご)(本名・渡辺安治(わたなべやすじ))さんが12日午後3時16分、嚥下(えんげ)障害による肺炎のため、東京都内の老人ホームで死去した。70歳だった。
 葬儀は近親者だけで済ませた。
 京都府生まれ。高校卒業後、東映のニューフェースとして入社。
 1958年、映画「台風息子」でデビュー後、60年の「白馬童子」に主演して子供たちの人気を得た。その後、東映の時代劇映画に数多く出演。会社がヤクザ映画路線に転じると、「不良番長」シリーズや「仁義なき戦い」シリーズで活躍した。
 俳優の川谷拓三さんとコンビを組んだ即席めんのCMで軽妙な印象を残したほか、「独占!男の時間」「新伍のお待ちどおさま」などのバラエティー番組に出演し、歯切れのいい司会ぶりで幅広い人気を集めた。
(2009年8月14日07時40分 読売新聞)


shingo_yamashiro.jpg 山城新伍が、死んだ。数年前に女性週刊誌にて「認知症で徘徊」みたいな記事が出ていたことだし、その真偽は置いておいても、そういう記事が出るようになるってことは、まぁその「その日」がくることは覚悟しなくてはならないな、なんて思っていた。
 といっても私自身が銀幕スター、山城新伍の熱狂的なファンであったわけでも、TVでの軽快なトークの熱烈なファンを自称するほどのものでもない。(幼い頃からTVで見ていて、なんかお茶目な人だなと思っていたし、別段嫌いだったわけでもないけれど)でもやはりこのは残念でならない。

 その理由は、左に紹介する2冊、浅草キッドの濃厚民族、そして吉田豪の男気万字固めの影響にといえる。これらの本は両者とも対談本。インタビュアーはそれぞれ著者の浅草キッド・吉田豪である。そしてインタビュイーは男の魅力あふれる複数の著名人という点で共通している。その著名人とは・・

●男気万字固め
山城新伍、ガッツ石松、張本勲、小林亜星、さいとう・たかを、本宮ひろ志、乙武洋匿

●農耕民族
深作欣二、田原総一朗、山城新伍、テリー伊藤、力也、松井章圭、古館伊知郎、百瀬博教、石倉三郎、佐々淳行、野村克也、甲本ヒロト、高橋がなり、萩本欽一、ビートたけし

 だれもかれも、そうそうたる漢である。そしてこれらの男達の中で、唯一重複しているのが、我らが山城新伍なのだ。そして私はその語り口に魅了されてしまった。
 私を魅了した語りとは、端的に言えば山城新伍と関わった人間達の豪快なエピソードである。たしかに彼自身にも豪快なエピソードは多い。例えば70年代初頭、謹慎の理由を聞かれると、次のように語っていた。

ああ、謹慎っていうか海外で拳銃買ってきたの(あっさりと)。当時流行ってたから、買う人何人もいたのよ。●●●●とか、真面目な役者さんも買っちゃってね。ただ、俺の場合は干されてもヤクザ映画だから関係ないの。あるヤクザ映画のボスなんか、「お前、なんかリアリティあって、いいわ」って言っていたし(笑)。(P45-P46)
男気万字固め

 なんて味わい深い事も語っており、凄いといえば凄い。だがそれより心にズシンとくるのは、そしてこれぞ山城新伍の真骨頂といえるのが、彼と関わる豪傑達の血湧き肉躍るエピソードなのだ。
 ここでは、私なりの追悼の意味も込めて、とくに印象的だった東映・岡田社長、梅宮辰夫、そして若山富三郎の3人についてピックアップしようと思う。

東映岡田社長(当時)

shigeru_okada.jpg 今は名誉会長という肩書きらしい。ちなみに現社長は息子岡田祐介、娘はワイドショーでよくみる大学教授、高木美也子である。
 ・・・私にとって東映とは「東映まんがまつり」である。だいたい東宝のドラえもんの長編映画と同時期にぶつけてくるので、1980年中頃、小学生であった私にとってはどちらを観るか、身が引き裂かれる思いで悩んでいた。(その後レンタルビデオ店が増え始め、問題は解決したのだけれども)これはコロコロコミックを買うかコミックボンボンを買うか悩むのと同じくらい大問題だった。
 ちなみに東映は集英社系の漫画(たとえばドラゴンボールとか)とヒーローものを組み合わせていた。ターゲットの裾野を拡げる戦略だろうか。しかし東宝はドラえもん、藤子不二雄ブランドを全面に出し映画館へ集客していた。
 当時私も悩んだけれど、大長編ドラえもんならびに藤子不二雄ブランドの安定感から、結果常にドラえもんを観ていた。けれど、このライバル東映のラインナップには、なんか攻めてる感を感じずにはいられなかった。この、ドラえもん派の私の心を常に揺さぶり続けた東映という会社について幼い心ながら一目おいていた。
 しかし、私が生まれる前の東映はもっと凄かったようだ・・

だって俺がこの会社に入ってよかったと思ったのがね、『神風特別攻撃隊』っていう映画があって、次の製作予定に『日本共産党』が入ってる。それが製作中止になった理由が面白くて、思想的なことしゃないの。社長が「バカヤロー、代々木(共産党)がよぉ、前売り切符思ったほど買わねぇからやめたやめた! シブいんだよ!」って(笑)。解放同盟と組んで映画撮ったときも、みんなビビって怖がっているときに会長を呼びつけて「お前んとこ、もっと切符買え!」だって(笑)。そりゃあ凄かったですよ。でもやっぱり興業ってこういうものなんだろうなって。(P27)
男気万字固め

 このイデオロギーもへったくれも関係ないというメンタリティ、痛快である。この社長が率いる東映という会社の面白さについて、次のように語っている。

東映って会社の面白さはね、なんか監督に逆らったりすると、すぐ「赤か!」って言われるの。俺が時代劇撮影してたとき、「小田原まで三里」っていう立て札があってね。日本橋で旗本退屈男と別れて、板前の俺が立て札のところで別れるんだけど、「ちょっと待ってください、一里って4キロでしょ? 12キロって大磯あたりですよ。日本橋の板前が大磯まで下駄履いて送っていきますか? 品川で一泊した時代ですよ」って言ったら「うるせぇ、この野郎。やっぱりお前は赤だ! そんなことは黙っときゃわからん!」って(笑)(P29)
男気万字固め

 うーん、この知的でない感じが最高である。私も中学生の時、先生の指導で、放課後に数学の点数が良くない友人に問題の解き方を教えなくてはならないことがあった。なので結構がんばってわかりやすく教えたつもりだった、がそのとき彼から出てきた言葉は「いいからはやく答を教えろ」だった。

梅宮辰夫という野生児

tatuo_umemiya.jpg 「兄弟」と呼び合うほどの仲だった梅宮辰夫の逸話も面白い。

梅宮が脚本のどこを直してほしいかって相談されたときに、梅宮は全く脚本読まないから「脚本はいいけどな、レギュラーの数だけ女は揃えとけよ、現場行ったら揉めるからな」って(笑)。プロデューサーも「これ以上言っても無駄だ」って呆れてたけど。(P23)
男気万字固め

 何をどうすると良い作品が生まれる、なんていう定石は存在しないので、「レギュラーの数だけ女を揃える」ことだって、良い作品作りにつながる可能性は否定できない。なんて屁理屈は横に置いておいても、豪快だ。

去年の暮れなんて、俺に「なぁ、兄弟、視聴率ってなんだ?」っていきなり聞いてきてさぁ、40年テレビに出てんのに(笑)。(P36)
男気万字固め

 この感覚もすごい。どういう認識でテレビに関わってきたのか詳しく聞きたい。もっとカッコイイエピソードが聞けそうな気がする。

梅宮は何も考えていないからさ。俺さ、辰っちゃんが名付け親の女優とやったんだよ(笑)。それ辰っちゃんに言ったら、「なんで名付け親よりも先にお前がやるんだ!」って怒って(笑)。俺が「辰っちゃん、名付け親っていうのは父親代わりなんだから、やっちゃいけないんだよ」って言ってね、辰っちゃんも「わかった。損な役回りだな」とかいって(笑)。納得してんだよ。(P63-P64)
濃厚民族

 先ほどの「お前赤か!」のエピソードは、先行する理屈に対して感情が爆発したような構図だったが、今回は感情が先行。その場合は意外にあっさりと理屈に納得している。なんかわかりやすくて良い。

辰ちゃんのパーティはすごいよ。湯河原の方へ行くと「急に予定変更した」って連絡があって、「山の方を見たら煙が上がってるからな、そこへ来てくれ」って(笑)。そしたら地元の芸術家とか集まって、豚を一頭殺して、自分らでトン汁みたいにして食ってるんだよ。おそろしいよ、ワイルドでさ(笑)。(P74)

 煙を目印にさせるそのプリミティブな感覚は最高である。

あと「杉村春子事件」って知ってる? 江守徹がほんと酒グセ悪くてさ、俺たちが飲んでいるところに江守とかが入ってきて、いきなり辰っちゃんに噛みついて腕に歯形付けちゃってさ、それで辰っちゃん怒って「江守! あんなババアと酒飲んでるから悪酔いするんだ!」って。ババアって杉村春子さんのことなんだよ(笑)。「まずいよ、杉村春子先生、大女優だよ」って俺が教えてもわかんなくてね。「俺の『不良番長』に出てたか?」って(笑)。(P64)
濃厚民族

 ちなみに、左が不良番長である。当時の東映映画のプログラムピクチャーという位置づけで16作ものシリーズだったようだ。山城新伍はこういう。

2本立てっていう映画システムの中では、1本大作があれば『不良番長』が常に付いてくるわけ。邪魔にならなくて時間と制作費守ってりゃ、監督も俺たちも何やってもいい。そういう映画作りの楽しさはあったね。メインの高倉健や鶴田浩二なんかの作品がヒットするんだし、それにくっついてゲラゲラわらってりゃいいみたいな作品だから、なんの拘束もないの。(P22)

 なんか凄いなぁ。自由だ。ぜひDVD借りて観てみたいものだ。youtubeでちょっと調べたら、あった。
▼不良番長「出たとこ勝負」

 なんてわくわくするイントロなんだ。そして主題歌がかっこよすぎる。女風呂・肥だめ・・なんか撮影現場の楽しい雰囲気が伝わってくる映画である。
 ちなみにこの本人、梅宮辰夫は自身のブログ「不良番長」の「〝新伍が逝った〟」というエントリーで山城新伍の死を偲んでいた。

俺は神奈川県の真鶴町という所に家がある。
東京の渋谷から1時間10分くらいで来れる。
ある日「これからそっちへ行く」と言って、四時間半経っても未だ来ない。
やっと着いた。「何してたんだ?」と云ったら、高速の出口を間違えて御殿場(40キロも先)迄行ってしまって、そこでUターンして来たと言う。
しょっちゅう来てるのに、何んで又そんな阿呆な事を!とよく聞いたら、車線変更が怖くて出来なくて、左側出口に寄れなかったという。
3つも出口を飛ばしてる。
ワインを飲み始めて10分もしないのに、グラスを持ったまま、コックリコックリ居眠りが始まる。5年前の事だ。
その頃から体調を崩しはじめた様だった。

 この梅宮辰夫が住むという「神奈川県の真鶴町」とは豚一頭殺してトン汁パーティをした場所だろうか。

若山富三郎の魅力

tomisaburow_wakayama.jpg 勝新太郎の実兄、山城新伍の師匠にあたる若山富三郎とのエピソードもすごい。

俺、映画の主役の話が来たけど断ったことがあるの。いい作品だったんだけど、若山さんが自殺するんじゃないかっていいうような状況にいたから、一緒に付いてまわろうと思ってね。「お前、なんで自分の主役の話を放って行くんだ?」って言われたけど、「悪いけど、この台本より若山富三郎がここをどう切り抜けるかっていう方が面白い」と(笑)。「その結果見てどうなるの?」って言われたら、「お言葉を返すようですけど、その映画に出てどうなるんですか?」と。(P58)
男気万字固め

 同じ内容を農耕民族でも語っている。

東映でヤクザの子分やったり、ピンク映画の喜劇やってるよりも、若山さんが借金取りが来たりする時の状況をどう切り抜けるのかを見る方が面白いんだよ。それに、ひょっとしたら俺がそばにいにとこの人自殺するんじゃないかと思ったりしてね。それで心配していると「新伍、今すぐ家に来い」って連絡があって、行くと、なんと机の上に金があるんだよ。どう見ても5、6千万。でもその後すぐに「こんばんわ」って借金取りが来て(笑)。「金があるところを見せたかった」っていうんだよ。(P59)
濃厚民族

 うーん、「この台本より若山富三郎がここをどう切り抜けるかっていう方が面白い」なんて最高にかっこいい。名言である。このホモソーシャル的な関係ってやっぱり女性は理解できないのかもなぁ。
 同じ農耕民族の中で、同じく浅草キッドと対談しているビートたけしは若山富三郎についてこう語っている。

チャンバラトリオの結城の哲っちゃんが、若山さんにくっついてて、若山さんが太秦を歩いてたら、向こうから里見浩太朗さんがたまたま用事が会って、若山さんに顔を合わさず挨拶をしなかった。「おい、哲。今、里見の野郎、俺に会ったのに挨拶なかったな、どついてこい」と、哲っちゃんしょうがないから「里見さん、すいませんけど、うちの先生が挨拶しなかったから殴れって言うんですよ」って。里見さんも困ってどうしようってなって。メイクさん呼んで青あざかいたんだよ。顔に殴られたメイクを(笑)。二人で若山さんの楽屋に訪ねて里見さんが「先生、さっき先生に挨拶がないと、哲にさんざん殴られました。すいませんでした」「なに哲が殴ったのか。テメエはなんてことするんだ」って、哲っちゃんぼこぼこに殴られて(笑)。「結局俺が殴られるじゃねえか」って(笑)。面白いよ。(P299)

若山さんの楽屋に挨拶にいったら「どうした、たけし」「先生が入ってると聞いたので挨拶にきました」「おう、俺に挨拶か。ところで、俺の前に誰か挨拶したか」「してません」「ならいいんだよ」って(笑)よくわかんねぇだろ。(P300)

 こういう人が私はたまらなく好きだ。たとえば「自分のルール」と「みんなのルール」があるとする。普通の人は葛藤するものの「自分のルール」をとりあえず隠すとか、なかったことにして、「みんなのルール」にあわせる。でも「自分のルール」とうまく折り合いを付けられない人も少なからず居るわけで、うまく折り合いが付けられないからこそ生じる葛藤に見え隠れする可愛げみたいなものが魅了されるのだろう。そして山城新伍も。

山城新伍さん死去】里見浩太朗さん「悪友で、かわいい弟」
(中略)
 里見さんは昨年、山城さん入院の知らせを聞き、知人を通じて面会を申し込んだ。しかし、「先輩の顔はみたい。でも、おれは見られたくない」と返答があり、見舞いを取りやめていたという。「それほど悪いのか、と思いました。でも、それでも生きてくれてさえいればいいとも。ただ、今は、とてもかわいそうですね」
産経ニュース

 晩年の山城新伍も「自分のルール」と折り合いを付けられなかったのか。が、貫くその姿がカッコイイ。けど悲しい。

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