君は「アダチン」を知っているか

 「アダチン」は、足立区のキャラクターのひとつである。なんとブログまである。(しかもアメブロ!)そのプロフィールによれば「東京都足立区の文化芸術を振興する公式キャラクター」とのことである。

これがアダチンだ

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 なんかふてぶてしい。
 足立区ホームページにある「足立キャラクター図鑑」によるとアダチンについて「文化振興を応援する」とある。それは区民としてはとても善きことであり、どんどん応援して頂戴、なんて心から思った。そしてこの「あだちん」下記のようなプロフィールが公開されている。

名前:アダチン
種類:犬
性格:やんちゃでちょっぴり生意気
趣味:アート鑑賞、ひとりでお散歩
ちょっと自慢できること:尻尾を絵筆にしたお絵描き。色は虹色。
お仕事:足立区の文化の振興をお手伝いすること。
アダチンからのひと言:アートだチン!

 「アダチンからのひと言」といって「アートだチン!」と、ほぼなにも言っていないに等しいメッセージが「ひと言」である置いておいても、注目すべきは「ちょっと自慢できること」である。答えは「尻尾を絵筆にしたお絵描き。色は虹色。」とあるのだが、「色は虹色」と限定されるということは、尻尾に絵の具の類をつけて絵を描くのではなく、「絵を描こう」と意志し、たとえばそこにある画用紙に尻尾をこすりつけることによって、虹色の体液を分泌するということなのだろうか。なんだかあまり人前でやることではない気がする。
 さて、この「アダチン」であるが今年のはじめくらいに、このアニメーションがyoutubeが話題になっていた。

ニュースで取り上げられた「アダチン」

足立区のゆるキャラ<アダチン>にテーマソングが誕生 新作アニメがYou Tubeで絶賛公開中(2009年1月14日 Techinsight)

足立区のキャラ「アダチン」 アクセス16万突破の大人気(2009年1月26日 J-CASTニュース)

下町の”きつキャラ”アダチンが人気!(2009年1月29日 東京ウォーカー)

足立区キャラ「アダチン」の歌、ユーチューブでブレーク(2009年1月25日 朝日新聞)

足立区のゆるキャラ「アダチン」人気爆発!! アニメがYouTubeで30万アクセス(2009年3月4日 マイコミジャーナル)

 とりあえず、朝日新聞から引用する。

 東京都足立区発のキャラクター「アダチン」のテーマソングがインターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で大人気になっている。昨年12月中旬の公開から3週間で3万アクセスを突破した。今年はアダチンが大ブレークの予感!?
 アダチンは、日本古来の犬「チン」がモデル。区の文化・芸術をPRするキャラクターとして、区の支援を受けて07年12月に誕生した。区内のアート関連会社「ボングゥー」(千住1丁目)が企画し、NHK「サラリーマンNEO」のオープニングアニメなどを手がける若手人気クリエーターの青木純さん(27)がデザインした。

 日本古来の犬「チン」がモデルというがなぜ「チン」がモデルなのだろう。ゆかりがあるのだろうか。ただ「あだち」の「ち」との語呂あわせか?
 ちなみに作者の青木純さんは沖縄県出身らしい。ただ単純な地域のキャラクターなのだから、足立区出身者がつくったほうがいいんじゃないか、って素人考えでは思うけど、過剰に自虐的になることを危惧したのだろうか。(たとえば、足立区生まれのビートたけしがつくったら自虐的なものになりそうな気がする)

▼これがyoutubeにあった動画である

 なんかすごい。こういうものを足立区として採用していく意志決定過程にすごく興味がある。

すばらしい試みだと思うのだけれど・・

 私がこのキャラクターを発見したのは今年の春、上記サイトなどで紹介した記事がたまたま目に入ったからだ。で早速当時の足立区ホームページにアクセスし、「アダチン」とはなんのなのか調べたのだった。ホームページによると以下のような記述があった。

このたび、<足立区文化産業・芸術新都心構想>をPRするアニメーション「アダチン」を制作いたしました。アダチンは、日本古来の犬種「チン」をモデルとしながらも、千住のまちを新しい色に染めていくとてもかわいいキャラクターです。これはまさに、日光街道の宿場町の頃から受け継ぐ伝統と、未来へ向けて発信する新しい文化・芸術を併せ持つ千住のまちにぴったりではないでしょうか。そして千住のまちを美しく変えていくアダチンは、<足立区文化産業・芸術新都心構想>の主役である区民の皆様ひとりひとりの象徴ともいえるでしょう。(2009年3月くらいの足立区役所ホームページより※今はないが)

 私はこの文章を読んで「何故千住限定?」と思った。足立区の醍醐味と言えば、荒川を北上したエリアじゃないのか。確かに北千住はさまざまな路線が乗り入れるターミナル駅だけど、どうしてそこで止まってしまうのか。なぜ東武伊勢崎線沿線沿いに北上しない?途中で見える東京拘置所を隠したいのだろうか?(東京拘置所は厳密には葛飾区だが・・)いや、別に東武伊勢崎線でなくても、つくばエクスプレスでも日暮里・舎人ライナーでも良いのだけど。

 僕が個人的に注目しているのは、つくばエクスプレスが新しい中央線的な磁場を持つ可能性です。(P210)

 なんてことを東浩紀氏「は北田暁大氏との対談で語っているわけです。何故か、についてあまり詳しく言及されていなかったがこのくだりに胸が高鳴ったものである。
 私が長年住み慣れた足立区を離れ、大学へ自転車で通える八王子に住んでいたのがおよそ19才~22才頃。都心に出るには京王線または中央線を使わなくてはならない。その沿線利用が日常化したときに、特に肌で感じたのは、その中央線沿線にある芝居をやるなんていう希有な人間を優しく包み込んでくれているような雰囲気であった(おもいっきり主観だが)。演劇ばっかりやっていた関係で、同じ大学に所属する別の演劇研究会(キャンパスが都心)の人たちが「○○と言う劇場で芝居やる」なんてことになれば、「我々演劇研究会名義で酒を持っていこう」とかいうことになる。それで中央線に乗って劇場に行って芝居観て、そのままそこらへんの居酒屋になだれ込んで「あいつら人が死ねば客が泣くとおもってやがる」とかいって酷評したりしていた。また「やっぱり舞台美術は美大の人に頼むべきだ」なんていって美大の人とコネクションをつくって一緒になにかをやるべく交流を持つとか、その時向かうべき場所にはいつも中央線沿線であった気がする。

 北田氏と東氏はこの中央線沿線についてこう語っている。

北田 中央線沿線って典型的な漫画職能集団居住地域ですね。漫画家の場合は、アシスタントさんとかも実際に近くに住む必要があるから、特定の場所に関係者が集中するのは自然ですけど……いつごろからですかね、漫画家やその関係者が中央線沿線に集まるようになったのは。
 中央線沿線はそもそも小説家が集まる場所だったと聞いたことがあります。阿佐ヶ谷文士村とか呼ばれていたそうです。昭和初期なので、おそらく関東大震災と関係があるんじゃないかな。あと太宰治も三鷹に住んでましたね。
北田 それで、その名残?
 どうもそうらしいですよ。中央線の北、西武新宿線や西武池袋線沿線も漫画家が多いので有名ですが、そこもそういう基盤があったんじゃないですかね。トキワ荘があったのは豊島区南長崎で、西武新宿線と西武池袋線に挟まれたところですが、そこも、昭和初期に画家や彫刻家の卵が多数集まって、「長崎アトリエ村」と呼ばれた地域だったようです。そう考えると、中央線、西武線沿線は、長いあいだ時代に応じて「若者の街」「サブカル」の街として自己イメージを更新し続けてきたところなのかもしれません。
北田 新宿がアングラ、サブカル都市として最盛期を迎えていたのは、いうまでもなく六〇年代のことです。新宿―中央線沿線の「サブカル化」「サブカル好きの若者が住むところ」というイメージは、その時期から情勢されてきたように思います。
 そうですね。中央線沿線にはいまでもヒッピー文化が残ってますよ。なんでも「中央線はインドに通じている」という言葉もあるとか。
北田 ……そういえばインドに行ったことのある友人はだいたい中央線沿線に住んでいたな(笑)

(P212-213)

 この中央線沿線には、歴史的裏付けがあると言うことなのだが、つくばエクスプレス沿線にもこれから歴史をつくっていくだけの「なにか」があるのだろうか。
 この「なにか」を形成するため、もしあるのならそれを強化するためにも、北千住を北上した、西新井でも竹の塚でも、あのあたりに大学を誘致するべきではないか。そうすると必ず一定数の学生が、モラトリアムだったり、思想にかぶれて留年する。(文学部とか比較的就職に直結しない学部のほうがいい)そしてまともに就職ができずに、うだうだしているうちに大学周辺に根付く。年を重ねるに応じて、どんどん自己イメージと実社会の距離が拡がり絶望に追い込まれる。とはいえ時間が有り余るし、はけ口もなくエネルギーが鬱積しているから、なにかそのエリアで生産に結びつくわけがないようなパフォーマンスを始める。そこから同時多発的にそういう人たちが続出、ちょっとしたうねりができてたら街がおもしろくなるのではないか。
内田樹氏は著書「街場の教育論」で、こう言っている。

 うちのゼミの浅井くんが卒論で大阪の縄文時代の海外線上に現在、何があるかを歩いて調べてくれたのですが、そこには神社仏閣と病院と墓地とラブホテルがみごとに図ったように並んでいた。これは偶然ではないでしょう。

 宗教施設と医療施設と墓地と大学とラブホテルは人類学的機能としては同一カテゴリーに収められるということです。神社仏閣病院墓場はわかるとして、どうして大学とラブホテルが・・・・・・これは「岬」に託された「異界への回路」という補助線を引くとわかります。大学は知性が「外」へ越境するために作られた場所であり、ラブホテルも本来は新しい生命を生み出すためのものである性行為だけに特化された空間ですから。

(P256-259)

 「竹の塚」の「塚」とは古墳のことらしいから「異界への回路」としては申し分ない。大学誘致にはうってつけだ!
 …とおもったら、「あだち広報」なる足立区の広報誌にこんな記事が。
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 足立区には、既に開学された放送大学、東京藝術大学、東京未来大学に続き、帝京科学大学(22年)と東京電機大学(24年)の開学が予定されていることを、皆さんはご存じですか。
 5つの大学がそろう24年には、大学生など約1万人が、千住地域で活動することになります。

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 へぇー平成24年には5つの大学が揃うという。でもやっぱり千住地域かぁ・・文学部的なものもなさそうだなぁ・・まぁ東京藝術大学(音楽学部音楽環境創造科、大学院音楽研究か音楽文化学専攻)に期待したい。IT的な方面からだとしたら東京電機大学かな。でもITだと情報のやりとりがネット中心になるだろうから、大学周辺に学生が住み着いても、文化的なものが集積されるのか不安だけど。

欄外