「突然、バカうま」とはなにか~丸仙@武蔵小杉
先日、所用があり母校(高校)へ行く用事があった。同じくやってきた同期や後輩とも再会でき、取り急ぎの用事を無事済ますことができた。そして帰り際「せっかくだからあそこに行こう」とみんなで向かった店が、今回紹介するラーメン屋「丸仙」である。
通学路にその店はあった
場所は武蔵小杉駅から徒歩5分くらいのこの店。高校時代、駅からの通学路でもあり、毎日店内をのぞいて往来していたのだった。朝通ると、忙しなく仕込みをし、土曜日の授業が終わり帰宅のためにその店を通ると長蛇の列。夜は夜でお客さんが入っている、なんかすごい店だった。高校時代、部活で夜遅くなると、当時の顧問が名刺をくれる。そこには「丸仙様、今日もよろしくお願いします」という一筆が書かれており、この名刺を店でかざすと好きなものを注文できる仕組みがあった。
夜遅くに部活が終わり、先生に報告に向かうとおもむろに差し出されるこの名刺、我々はこの名刺を「魔法の名刺」と名付け、嬉々として普段自分一人ではとうてい頼まないメニュー(たとえば、チャーシューメンとライス、とか)を頼み「豪遊」していた。(いま思えば、この顧問の先生があとで支払っていてくれた、つまりおごってくれたわけであり、感謝でいっぱいである)
▼これが外観である

当日、訪れたのは休日の17時前。雨が降っていた。
支那そば注文
▼味噌ラーメンや塩ラーメンなどもあるのだが、オーソドックスに
湯気を香ると、当時を思い出す。そして丼も温めるため、スープがとても熱い。
味は醤油ラーメンなのだが、以前紹介した西新井ラーメンのように、魚系の香りが立つ、というわけではない。どちらかというと肉系のどっしりとした味を強く感じる。
▼このどっしり感、この写真からはわからないよなぁ

以前来たとき、近くの小学生だかがこの丸仙を主題にした作文を書いたらしく、その文章が店内貼ってあった。それによると「バナナをスープ鍋に入れて出汁をとっているのに驚いた」とあって、当時その文章に自分も驚いたのを思い出した。ただ、バナナがどっしり感を出しているとは思えないけれど。
湯切りに職人技を見る
この店の特長は、なんといっても平面に近い浅い取っ手付ザルで麺の湯切りをする点にある。私の見る限り最近のラーメン屋における湯切りのトレンドは、1人前ずつ麺が茹でられるように、縦長の長方形または円柱状のザルに麺を投入して鍋にくべる形式であるように見受けられる。このスタイルだと注文毎に、麺入りのザルを湯に沈めるだけでいいので、仮に最大8人前までのザルを沈めるスペースがその鍋にあるとしたら、客毎の注文に時間差があっても、それぞれの客を待たせる時間はほぼ均等に納めることが可能。それぞれのゆで時間もストップウォッチなどで管理もしやすい。
しかし丸仙は違う。たとえば私が入店した際に、私たちのグループ4人は皆同じく「支那そば」を注文した。その際に麺茹で係の店員(当時から変わっていなかった!)は麺茹で用の鍋に、なんの躊躇をすることもなく4人前の麺を投入し、鍋の中で麺を泳がせていた。ある程度時間が経ったら時間を見るわけでもなく一本の麺を掬い、麺の茹で具合を指で確認して湯切り作業に入る。ここからがまさに職人技とでも言うべき作業で、4人前分が投入されている中からリズミカルに1人前ずつ麺を掬い出すのである。この正確性がなんかすごい。
(他のブログをみると、一気に投入する麺の量は多くて3人前という記述もあるので、「4人前投入」は私の記憶違いかもしれない。。でもみんな一気にラーメンが給仕されたように思うのだが。。)
さらにいえば、支那そばと他のラーメン、たとえばミソラーメンなどは、麺の種類が違うので、一緒に茹でられない。例えば入店して支那そばを注文するとする。しかしすでに麺茹で用鍋では、支那そば用麺が泳いでいるとしたらそれは、自分の支那そばにありつくまでけっこう時間がかかるこということを意味する。たとえばその後に茹でる予定がミソラーメンの麺だったとしたら、いま茹でている支那そばを捌いて、ミソラーメンをやっつけて、私の支那そばという順番になるわけである。
そのため、昼時など行列が発生するときには、別の店員が先に注文を聞いて回り、その内容に応じて臨機応変に茹でる麺のグルーピングを行い、麺茹での最適化を図っていたようである。
この麺茹で方法は効率的かと問われれば決して効率的とは思えないのだけれども、やはりなにかあるのだろう。たっぷりのお湯の中に麺を投入して泳がすことによる効果とか。
▼これが広い鍋の中を泳いだ麺である。

「突然バカうま」の謎
このラーメン屋の前を横切り、時に入店する、といったことを繰り返していたあの3年間、常に私を悩ませていた問題がある。
▼この写真をご覧ください

上記写真左側ににあるように「突然、バカうま」というキャッチコピー。このキャッチコピーが若かりし日の私を悩ませていたのだ。
高校2年・3年と格闘した微分積分。二次関数上2点を通過する直線。この2点を近づけながら微分についてイメージするのと並行して、私はこの「突然バカうま」状態を同じく座標軸上でイメージしていた。
▼それが下の図である

まず縦軸に「おいしさ」、横軸に「時間」をとった座標軸を思い浮かべる。注文をして、待ってラーメンが給仕され、とりあえずレンゲでスープを口に含む。スープが舌に触れ、しみこむにつれておいしさ曲線は上昇そして、一定値に安定する。(厳密には、食べている状態かそうでないか、さらには食べているものによってグラフは軸上下に波打つはずだが、そんな図をパワーポイントで書くのは面倒なので直線に割愛している)
そしてどこかで、一気に跳ね上がるタイミングがあるはずで、これが「突然、ばかウマ」を表しているはずなのだ。(もしくは、段階的においしさがレベルアップするイメージなのかもしれない)
さて、この「突然」とは、いったいどのタイミングできるのか。食べてすぐなのか、食べている途中なのか、食べ終わる直前なのか、食べ終わって駅まで歩いている途中なのか、それとも家に帰って風呂に入っている時なのか・・そしてどの調味料ないしは食材がこの「バカうま状態」を形成するのか。
あの頃の自分は妄想ばかりしていたので、いろいろなパターンを想像することに躍起になっていた。しかしいくら食べても、最初から最後まで普通においしいので、この「おいしさ曲線」はだいたい一定で跳ね上がることもない。非常に悩ましい問題だった。
「突然バカうま」を調べてみる
いまはインターネットの時代、ということで「突然バカうま」で検索してみることにした。するとウィキペディアで「荻窪ラーメン」にヒットした。
抜粋するとこうある。
1984年の「愛川欽也の探検レストラン」(テレビ朝日)は、単なる店の紹介にとどまらず、青梅街道沿いにある有名店「春木屋」と「丸福」とに挟まれ閑古鳥が鳴いていた「佐久信」というラーメン屋をどうかにかして繁盛店にしようというプロジェクトを放送した。メニューの改善、店舗改装、糸井重里によるキャッチコピー「突然、バカうま」の作成等のいろいろな企画を立てるというもので、大きな注目を集めた。なお、「佐久信」はすでに閉店し、「丸福」も「白看板」と呼ばれる元祖とも言うべき店が2005年に閉店した、同系列の「丸福本店」が付近のアーケードにある。
なるほど、つまりこのコピーは糸井重里によるものだったのだ。糸井重里氏はどういう意図でこのコピーを書いたのかだろうか。そしてなぜこのコピーが武蔵小杉の丸仙に流れ着いたのか?丸仙は荻窪ラーメン系列なのか?(検索してもなかなかわからなかった)
私は荻窪ラーメンというものを定義できるほどまだラーメンに明るくないので何ともいえない。実際に荻窪ラーメンを食べて味で確認するしかなさそうである。

