岩下温泉の冷泉に浸かり、ほうとうを食べた。

前回の「ほったらかし温泉から夜景を眺める」のつづき。
「ほったらかし温泉」から出て、石和温泉の安ホテルにチェックイン。
場所は温泉街から少し離れている。
素泊まりだったので、ホテルの支配人に、「近くにご飯が食べられるところありますか?」と聞いた。
お酒も飲みますか、と聞くので、もちろん飲むとこたえると、居酒屋ならすぐ前にある、ただ普通の居酒屋であまりおススメはできない、と言う。
温泉街まで行けば「愛作」という店がある。そこは県外からの客も来るような店らしい。
一瞬、私はその「愛作」に行ってみようかと思ったが、歩いて行くには遠いので、ホテルの近くで適当にすませることにした。
山梨だから、ほうとうがいいかな。


少し歩いたところに、「ほうとう」の看板を掲げた店があったので、そこに入った。
すると、「麺類は終わってしまったので、ご飯物だけになります」と言われた。
ついてない。
「じゃあ、よします」と言うほど、どうしてもほうとうが食べたいという訳ではないので、とんかつ定食と生ビールを注文した。
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とんかつは美味しかったが、やっぱりほうとうが食べたくなった。
明日こそほうとうを食べようと心に決めた。
ホテルの部屋でお酒を少し飲んで寝た。
1月11日(日)。
目的の岩下温泉である。
嵐山光三郎は『日本全国ローカル線おいしい旅』(講談社現代新書2004年)で、岩下温泉について、こう書いている。

 指のさきまでアワビの味がしみたところで、すぐ近くの、山梨市岩下の岩下温泉旅館へ向かった。桃山とぶどう畑に囲まれた山あいの一軒宿で日本昔話に出てくるようなのどかなたたずまいだ。甲州最古の湯で、古くから霊湯として知られている。村の小川に沿った道端には道祖神があり、古墳の岩室がある。東京からこんな近いところにこれほどの霊泉があるのを知ると、みんなびっくりする。温泉旅館のすぐ横に走湯神社があり、湯の神様をまつっている。この宿の木造旧館は冷泉で、銭湯を思わせるレトロなつくりだ。三つの浴槽があり、ひとつはあたたかいが広い浴槽の冷泉は二十八度。つかったときはヒヤッと身をちぢめるものの、一分もたつとそれがゾクゾクと快感になってくる。

 筋肉痛に絶大の効用があり、もとは近在の農民が一日の仕事の疲れをとるためにつかっていた。肩こりに効くためプロ野球選手がお忍びでやってくる。野茂秀雄選手もそのひとりだ。プロゴルファーの青木功選手もその一人で、青木選手には私が紹介した。昨年は、深沢七郎さんの墓参りのあと、赤瀬川原平、南伸坊、篠原勝之、松田哲夫らと立ち寄った。一度、岩下温泉の冷泉の味をしめるとやみつきになる。

 宿の主人は日川高校の野球部監督をしていたから、この冷泉がスポーツ選手の筋肉に効くことを熟知している。宿は値が安く、客の扱いにやさしい心遣いがあり、料理が上等で、桃の花の季節に亡父と来た記憶がある。入浴料は三〇〇円で銭湯より安い。

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↑手前がそのままで、奥が加熱した温泉
「岩下温泉旅館 旧館」の源泉に浸かった。
冷たい。
嵐山光三郎は「つかったときはヒヤッと身をちぢめるものの、一分もたつとそれがゾクゾクと快感になってくる」と書いているが、私はヒヤッと身をちぢめて、1分たってもブルブルしていた。
岩下温泉は、夏向きなのだろうか。
5分ぐらいたつと、慣れてきてゾクゾクしてきた。
40分位浸かっていただろうか。
凄く気持ちよい温泉だった。
これならやみつきになるかも知れない。
さて、次はほうとうである。
ガイドブックを持っていなかったので、『ツーリングマップル関東甲信越』(昭文社2008年)を見ると、「皆吉」という店が載っていた。

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 明治時代に建てられた

 民家で食べるほうとう

 野菜も味噌も自家栽培

とある。
なんとなくよさそうな気がした。
「皆吉」でほうとうを食べて、大菩薩ラインを通って、家に帰る、というコースにしよう。
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「皆吉」に着くと、たくさん人が待っている。
ラーメン屋だって並んでても、回転がはやいからそんなに待たないんだから、ほうとうも似たようなものだと思って、私も待つことにした。
(茹で時間は違うかもしれないけど、前もって注文しているんだから)
その考えは甘かった。
1時間待った。
よく見ると、待っている客の名前が書かれたボードの後ろに、「只今1時間待ち」という旨の表示があった。
これを先に見ていたらあきらめただろう。
ほうとうは食べたかったけど、1時間待ってまでも食べたいとは思っていないのだ。
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野菜がシャキシャキしていて美味しかったけど、1時間待って、食べるのは10分かぁ。
食後、大菩薩ラインを走ると、雪が残っていた。
ほうとうに待ちくたびれて、運転も疲れた。
今度は夏に、岩下温泉に入りに行こうと思った。
(「愛作」にも行ってみたいな。ほうとうはもういいや)
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書を持って街へ出る