大石真人は『温泉の文化誌』(丸善ライブラリー1995年)でこういっている。
温泉の本質的利用というと、やはり温泉療養(湯治)が考えられます。わが国は世界一の温泉国であると同時に、世界一先進的な温泉湯治国でありました。
「ありました」と過去形なのは、いまはドイツが先進国といわれているかららしい。
でも、かつて、日本人は上手に温泉を利用して湯治をしてきたのである。
松田忠徳は『温泉教授の湯治力』(祥伝社新書2005年)で、「最前線のビジネスパーソンこそ」湯治をしてほしい、とうったえている。
私は最前線のビジネスパーソンではないが、湯治をしたみたい。
ただ、温泉の療養効果は、即効的なものではない。
湯治の期間について、大石真人はこういっている。
湯治期間ですが、前記のように三~四週間というのは、世界共通の常識です。たとえばドイツの文献は二七日と書いてありますが、旧ソビエトの文献でも二八日となっています。最低二週間以上と併記されておりますが、わが国には面白い湯治期間の言伝えがあります。主として東北地方でいわれているのですが、「三日ひとまわり」という言葉です。三日といっても、三日間ということではなく、九日間です。湯治をはじめた場合、最初の三日は試し浴、もしこの間に湯あたりが出たら、少し休むか回数を減らします。次の三日間が本浴で温泉効果が効く間、そして次の三日間が仕上げ浴、温泉の効果が安定するという期間です。これが最低の湯治期間で、完全に効果が上がるのは、三日ひとまわりが三回、つまり二七日必要だと昔からいって来ているのは、日本の農民が長年の経験によって会得した、立派な温泉療法の知恵といってよいでしょう。
(『温泉の文化誌』)
また、松田忠徳はこういっている。
現在でも、本格的な湯治は最低1週間から1週間単位位で1ヵ月程度まで、というのが一般的です。これは何らかの疾病を治療したり、温泉の効果によって免疫力を高めることを目的とする場合が大半です。もちろん、短くても1週間程度の湯治ができることが理想ですが、忙しい現代人にとっては、それだけの時間を割くのはなかなか難しいかもしれません。
ただ、仮に2泊、3泊の短い逗留でも、湯治の意味を理解し、温泉と積極的に向きあう気持ちさえあれば、心と身体を常に健康な状態に保っておくことは十分可能です。
(『温泉教授の湯治力』)
松田忠徳は2~3泊でもといっているが、やはり、7~9日間の湯治が最低のラインなのではなか。
しかし、仕事をしている人が1週間、湯治場に泊まるということは、まずできない。
年末年始やゴールデンウィークの連休をすべてそれにあてるのは現実的には難しいだろう。
それで、考え出したのは、「通いの湯治」である。
家から通える温泉に1週間連続で行く。
これなら、平日に仕事をしながらでも可能だ。
(日常世界からの解放はできないかもしれないけど)
そして、温泉は源泉かけ流しが良い。
『週刊新潮』(12月11日号)の「墓碑銘」には、「温泉の達人」を全うし、11月23日に胸部大動脈乖離破裂のため60歳で急逝した野口悦男のことが書いてある。
日本には約3800ヵ所の温泉地があり、1万8000軒余りの宿があるという。温泉ジャーナリストの野口悦男さんは、40年余をかけ3300もの温泉地をコツコツと巡った。水を加えたり循環させない温泉のことを源泉かけ流しと表現したのも野口さんである。
また、野口悦男は『とっておきの温泉危ない温泉』(知恵の森文庫2003年)にこう書いている。
しかし、もう黙っていられない。温泉が大好きな俺だからこそ、もう一度ここで声を大にして言いたい。温泉で体を癒したいと思っている者にとって、源泉100パーセントの温泉を贅沢に掛け流しにしている温泉しか、温泉の名に値しない。循環させるなど、もってのほかだ。すべての湯船が源泉で満たせないのであれば、小さくてもいいから源泉100パーセント風呂をつくれ。そして、その他の循環させている風呂は、徹底的にケアしろ。そうでないと、温泉が間違った認識で捉えられてしまう。俺はそれをいちばん恐れるのだ。
松田忠徳は『温泉教授の湯治力』のなかで源泉かけ流しについてこういっている。
源泉100パーセントの温泉を溢れるままに注ぐこと。これを「かけ流し」といいます。これも私の造語ですが、「源泉100パーセントかけ流し」であることが、私の言う「ホンモノの温泉」なのです。本来の温泉の姿である、源泉100パーセントかけ流しを頑なに守っている温泉旅館や入浴施設は、まだまだあります。経営者が温泉の本質を理解し、大切に扱っている。温泉に対する日本人の心を感じ、思わず嬉しくなってしまいます。こうした温泉にひとたび浸かれば、その素晴らしさをまさに肌で、五感で感じることができるでしょう。
どっちが先かは分からないが、兎に角、源泉かけ流しである。
「温泉は、地上に湧き出した瞬間から成分が損なわれ、劣化が始ま」る。
だから、湯治をするには、源泉かけ流しの新鮮な温泉が必要なのである。
で、ここからが、前回のつづき。
別所温泉に行ったが、入れなかったので、他の温泉にでも入ろうか、ということになった。
丹沢には他の温泉もあるのだが、精神的ダメージが大きかったので、自宅に戻りながら温泉に入ることにした。
そうだ、橋本のロテン・ガーデンに行こう(住所は町田か)。
ここは、「自宅から湯治に通う」温泉の候補である。
(自宅から15kmもないくらいか)
帰りはルートを変えて国道129号を原付で走って橋本を目指した。
しかし、これが失敗だった。
国道129号は大型トラックが多く、原付の私は煽られ、ちっとも快適なツーリングではなかった。
なんとか、ロテン・ガーデンにたどり着いた。
料金は、平日だったので1000円(館内着込)。
温泉は、アルカリ単純温泉で、琥珀色をしている。
風呂は、内風呂、露天風呂、天望露天風呂などがある。
露天風呂が大きい。
そして、天望露天風呂が源泉かけ流しになっている。
天望露天風呂に入るには、階段を30段ぐらい登らなくてはいけない。
高い所に温泉を持っていくという発想は、いけない。
泉質中心主義ではない。
まぁ、でも、なかなか、良い温泉でした。
今後、他の「自宅から湯治に通う」温泉候補と比較してみたい。
休憩室で少し横になって、自宅へ向かった。
国道16号を走っていくと、長浜ラーメン八王子店がある。
学生時代よく食べていたので、久しぶりに入ってみた。
だいぶ改装されていた。
前はカウンターだけの店だったのに、テーブル席もある。
隣の店とつなげたようだ(隣はなんだったんだっけ)。
学生時代のように、麺カタコッテリを注文。
ラーメンを見て、あ~、こんなとんこつラーメンだったなぁ、と妙になつかしく感じた。
初めて食べた時は、そのコッテリさに衝撃を受けたが、今はなつかしさの方が強い。
もちろん、替え玉もした。
「ロテン・ガーデン」→「長浜ラーメン」
というコースも悪くないかな。
でも、1週間連続は無理だ。