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2008年8月13日

さよならMR.ワラビー

朝、9:00
一日の始まりに彼を見かける。
地下鉄の最後尾車両。いつもどおり。


彼は普通のおっさんである。
等身は低く、頭も禿げあがっている。
だが、彼は洒落者だった。

チノパンにBDシャツ、紺ブレ。
枯れたスタイルだが、これはこれで。


そして

足下にはクラークスワラビー。


皮靴がほとんどのビジネス街で
カジュアルな靴は目立つ。
それだけに大味のシルエットが野暮ったい。

画竜点睛を欠くのである。

だが、彼は雨の日も暑い日も
スウェードのワラビーで現れた。

ここまで来ると一種の生き方にさえ見えてくる。

私はいつしか彼を"MR.ワラビー"と名付けた。
そして彼との遭遇を毎日の習慣とした。

挨拶をするでもなく、ましてや面識を持っているわけでもなく
ただ、こちらから観察するだけの一方的な関係。
やがてその関係に変化が生じる

それは単に私の通勤先が変わるということ。

会社からの発表は割と唐突だった。

残された時間はあとわずか
もう彼と会うこともない。

だが、彼は飽きもせずワラビーを履き続けるのだろう

私は先に離脱するけれども
そのスタイルで
ビジネスという過酷な戦場を駆け抜けるがいい。

さよならMR.ワラビー


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