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2008年8月20日

タンクレストイレ頂上決戦(1) 官能新時代への挑戦

ほぼ2年にわたって海外のトイレ事情を紹介してきたこのコラムですが、今回から再び日本のトイレの話題に戻ります。その記念すべき第一号の話題に選んだのはさまざまな技術や付加機能が盛り込まれた日本ならではの商品、最新型のタンクレストイレです。初めてINAXのSATISが世に出た2001~2002年に続き、ここ2年はタンクレストイレ市場における第二次新商品ラッシュというべき時期にあるといえます。


第一次新商品ラッシュの際に登場した製品はTOTOのネオレストSDや松下電工のトレス、そしてジャニス工業のジーナ・プリモなどです。従来のタンク式の洗浄方式を採用し、給水圧の関係でタンクレストイレを設置できないがコンパクトな便器が欲しいという層に特化したジーナ・プリモを除くと、ソツのないつくりではあるもののこれといった特徴に乏しい商品という印象のものでしたが、今回は各社とも趣向を凝らした商品企画となっており、選びがいのあるラインナップとなりました。


今回の新商品ラッシュの役者達を簡単に紹介していきましょう。まずトップバッターを務めたのは2006年12月に登場した松下電工のアラウーノでした。有機ガラス系新素材の採用や中性洗剤による泡で便器洗浄の度に自動的に便鉢内を掃除する機能など家電メーカーならではの新しい試みを取り入れて大ヒット。これまで注目されることのなかった「ナショナルの便器」に人々を振り向かせるという快挙を成し遂げました。その翌年2007年8月にTOTOから発売されたネオレストハイブリッドは外観こそ従来のネオレストAシリーズと変わりませんが、更なる節水とタンクレストイレの欠点であった給水圧の問題を同時に解決するハイブリッドエコロジーシステムの採用などこれまでのTOTOの技術の集大成というべき便器に仕上がっています。そして今年6月に発売されたばかりのINAX REGIOはオフブラックというこれまでにないカラーの設定や静音性にこだわった洗浄方式、そしてブラックボディで53万円という価格など、これまでのタンクレストイレとは一線を画す高級路線の製品となりました。


このように三者三様の魅力のある製品がそろい踏みしているわけですが、こうなると一つ一つ試して比較してみたくなるのが衛生陶器愛好家ではないでしょうか。そこで今回は2回にわたってこの3機種を様々な角度から徹底比較して行きたいと思います。第一回目の今回は各社が工夫を凝らし、そして筆者自身も最も関心を寄せている便器洗浄の比較です。

上記の三商品の洗浄方式に対するこだわりはそれに付けられた名称を見ればわかります。一つ一つ紹介していきますと...


TOTO ネオレストハイブリッド : ハイブリッドエコロジーシステム
INAX REGIO : サイレントストリーム洗浄
松下電工 アラウーノ:ターントラップ方式


とそれぞれ何やら画期的な技術が投入されていそうな感じのする名称がつけられています。TOTOは自動車の世界でもはやおなじみとなった「ハイブリッド=エコ」のイメージをうまく拝借した感がありますし、INAXは静かさに自信のある印象、松下電工は何やら機械的な部分がユニークな構造をしていそうな感じのする名前です。今回はこの3つの洗浄方法の簡単な解説に加え、それぞれの方式をエコ度と官能度の両面から5段階で評価していこうと思います。官能度という指標に疑問を抱かれた方も居るかと思いますが、これは一言で言って流す音が心地よいものかどうかという点に関する評価です。節水が叫ばれている今日この頃、タンクレストイレも含めて節水性を強調した便器が増えているのはもちろん歓迎すべきことですが、その一方で洗浄音の心地よさという点で以前紹介したサイホンボルテックス便器を超えるものが登場していないという現状に筆者は少し不満を持っております。一回で16リットルもの水を消費するサイホンボルテックス式便器にとっては今後ますます生きずらい環境になっていく中で、官能の洗浄音を次世代に残せるか、という点に注目して比較していきます。


それではまず参考までに個人的には現時点で最高の官能性を持つと考えるサイホンボルテックス便器の洗浄音を紹介します。



洗浄レバーを操作した際の「ポコッ」という音、せせらぎのような穏やかな流水音がこの便器の官能性の秘密と言えるのかもしれません。残念ながら上記の3機種を含めたタンクレストイレはワイヤレスリモコンの洗浄ボタンを操作する方式となっているため、「ポコッ」音のほうは実感することは難しいですが、水流はコントロール次第で静かに出来る部分ですね。それでは次にタンクレストイレのパイオニアであるINAX SATISの洗浄音をお聞きください。



便鉢内洗浄→排水→溜水の3つのステップを電磁弁の切り替えによって行うシーケンシャルバルブ式(INAXではダイレクトバルブ式)の便器の典型的な洗浄音ですが、こちらが耳障りに聞こえる部分は水流音が大きいことと排水時のノイズの2つのようです。この方式から進化した洗浄方式を採用した3機種はこの2つの音をどれほど効果的に取り去っているのでしょうか。


ハイブリッドエコロジーシステム代表
TOTO ネオレストハイブリッド


<洗浄方法概要>
この便器がハイブリッドたる所以は従来のタンクレストイレとは違い、便器内に小さなタンクを持っている点にあります。タンクレストイレのならではの水道直圧式とタンク式の2つの特徴を持つ便器ということでこの名が付いています。水道管から直接取り入れられた水は便鉢内の洗浄に、タンクの水は排水の過程で溜水部の穴からの噴出用にという役割分担がされており、これによってこれまでタンクレストイレにつきものだった設置時の給水圧の制限が緩和され、タンク式の便器とほぼ同じ条件で使えるようになりました。節水に関しても水流の制御をより細かなものにすることによって大用で5.5Lというタンクレストイレ最少水量を実現しています。また、水流の制御により洗浄音の低減も同時に図っています。



水流の制御としては例えば水の出だしの部分は弱めに吐水し、その後強くしていくなどがあるそうですが、その効果もあって流水音は非常に静かです。しかし、基本はシーケンシャルバルブ式であるため排出時の耳障りな音はほぼそのまま残ってしまっています。3機種中最少の洗浄水量ということでエコ度は文句なしの満点ですが、官能度はやや低く3.5点と言ったところでしょうか。


エコ度:5点
官能度:3.5点


ターントラップシステム代表
松下電工 アラウーノ


<洗浄方法概要>
便鉢内洗浄と溜水についてはシーケンシャルバルブ式と同様ですが、排水時に溜水部の穴から水を噴出させるシーケンシャルバルブ式と違い、普段は上向きになっている溜水部から排水管につながるトラップ部分が下を向く(トラップが上向きから下向きにターンすることからこの名前が付いたようです。)ことで溜まっていた水が排水されるという非常にシンプルな構造となっています。使用水量は大用で5.7Lとネオレストハイブリッドに次ぐ優秀さです。



シーケンシャルバルブ式のように排水時に「ゴーッ」という耳障りな音がないのは排水時に溜水部の穴から水を噴出させないターントラップ式のアドバンテージと言えます。「ゴボボ」という空気を巻き込むような音も少なく、あっさりとスムースに排水する感覚は新鮮なものであり、排水時の音に関してはサイホンボルテックス式のそれに近いと言っても過言ではないように思います。全体的に不快な音は抑え目ですが、官能的と呼ぶには流水音が大きすぎる印象を受けました。流水音が抑えられれば排水時の新鮮なスムースさとあいまって新しい官能の形を提案できるポテンシャルを持っているように感じました。


エコ度:4.5
官能度:4


サイレントストリーム洗浄代表
INAX REGIO


<洗浄方式概要>
溜水部の穴から水を噴出して汚物を押し出すのではなく、排水時にトラップ内の空気を吸引することでサイホン作用を起こして排水するという仕組みになっています。節水性能が6Lと平均的なことからも分かるように、静音性に重点を置いて開発された洗浄方式と言えます。



静音性に重点を置いた洗浄方式だけあって流水音・排水音ともに良く押さえられています。流水音も上品ですし、サイホン式を採用するだけあって排水音もサイホンボルテックス式に近い雑音がなく、かすかな空気の音とともに排出されるというものになっています。排水時に「ヒューン」と空気が抜けるような音がしますが、この音こそがサイレントストリーム洗浄の空気を吸引する工程ですね。若干の違和感を感じますが、決して耳障りな音質ではありません。音質が快いだけでなく、各行程の流れが自然に、かつゆっくりと行われており見ていても気持ちがいいのです。現時点で官能性に対する回答をもっとも明確に示した便器と感じました。


エコ度:4
官能度:5


以上、3機種の洗浄方式比較を行いましたが、予想通り3機種の中で飛びぬけて高価なINAX REGIOが官能度で最も評価が高いという結果になりました。次回も引き続き3機種の便座としての機能、快適性などを様々な面から検証します。果たしてタンクレストイレの頂上はどの機種となるのか?


それではまた。


<今回紹介したトイレ>
TOTO ワンピース便器
銀座 伊東屋

INAX SATIS
INAX 銀座ショールーム

TOTO ネオレストハイブリッド
TOTO乃木坂ビル

松下電工 アラウーノ
ナショナルセンター東京

INAX REGIO
INAX 銀座ショールーム


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