観光スポットとしてのトイレ

オーストリアの首都、ウイーンと言えばモーツァルトやベートーヴェンなどの作曲家が活躍した音楽の都として、多くの音楽ファンを惹きつけてやまない都市であります。劇場や宮殿など彼らの足跡を辿ることのできる場所も多く残されていますが、こんなものも音楽に因んで独特のひねりを加えたものになっているのです。


このブログで取り上げる以上、それが何であるかは検討がつくのではないかと思います。そう、それはトイレ。世界でも屈指のオペラハウスと呼ばれるウイーン国立歌劇場にほど近い地下街の中にそれはあります。

画像では分かりにくいですが、看板には”Opera Toilet”と書かれています。トイレにまでオペラを持ち込むとはさすが音楽の都…、と思わず感心してしまいます。国立歌劇場のイメージに合わせたような奇抜な外観、「オペラ+トイレ」というネーミングの意外性、そして絶えず流されるクラシック音楽の取り合わせは私のようなトイレ好きのみならず一般の観光客の足をも止めさせる力を持っているのか入口付近では記念撮影をする人々の姿が途切れません。撮影だけでその場を去る人も多く見受けられますが、衛生陶器愛好家としては中に入らない手はありません、迷わず60ユーロセントを投じてゲートをくぐります。この料金はウイーン市内の公衆トイレとしては平均的なもので、特に高いというわけではありません。ただ、他の多くの公衆トイレでは小便器の利用は無料となっているので男性にとってはちょっとした出費となります。

オペラトイレ内部です。引き続きクラシック音楽が流れており、リラックスして用を足すことができます。そういえば以前便通が良くなるCDというものが発売され話題になっていましたが、このトイレでもそれを意識した選曲になっていたりしたら面白いななどと一瞬考えてしまいました。内装については個室の扉にそれらしいデザインの飾りがついているのが特徴です。この扉には劇場の特別席、仕切り席を意味する”Loge ・(・は通し番号)”と書かれた札が付いているという粋な計らいが為されています。その「特別席」の内部は…、というと便座が木製であること以外特にスペシャル感のない作りになっています。ただ、便器が日本では見られない手前に水溜まりがあるタイプであるという点で衛生陶器愛好家にとっては興味深いものがあるかもしれません。

小便器のコーナーは「立って用を足す」という性質を生かしてバーを意識した内装になっています。オペラトイレという本来の趣旨から少し外れている気もしますが、これはこれで雰囲気は悪くありません。
以上、外観から受ける印象通り丁寧に作りこんだというよりは近所の名所に便乗して軽いノリで作ってみたといった印象のトイレに仕上がっていました。国立歌劇場のイメージを利用してトイレを作るとはなかなかユニークなことを考える人が居るものだと思いましたが、ウイーンの変わり種トイレはこれだけではなかったのです…。

翌日私はウイーン出身で、日本でも大阪のごみ処理施設のデザインなどで有名な建築家フリーデンスライヒ・フンデルトヴァッサーの手による集合住宅フンデルトヴァッサーハウスを訪れました。”Toilet”の看板を頼りに隣接するインフォメーションセンターの地下1階に向かうと…。

こんなものを発見!
フンデルトヴァッサーハウスのイメージに合わせたカラフルかつ有機的な外観が観光客を誘います。名づけて”Toilet of Modern Art”「近代美術のトイレ」といったところでしょうか。こちらもインパクトはオペラトイレに負けず劣らずで、観光客の記念撮影に大人気でした。
オペラハウスと同じ60ユーロセントを惜しみなく投じ、中へ入ります。

オペラトイレにおけるBGMのような飛び道具がないので特別なトイレ感は薄いですが、モダンアートを感じさせる色づかいと小物類のデザインがなかなか素敵です。個室にはちゃっかり姉妹トイレであるオペラトイレの宣伝が貼られています。
今回は観光地に便乗した変わり種トイレを2か所紹介しました。ネタとしての面白さでいえばやはりオペラトイレに軍配が上がるところですが、モダンアートトイレは細部のデザインにおいて作り手のこだわりを感じるので、完成度という点においてはこちらの方が上かなと個人的には思います。日本の観光地で見られるお土産物には時々思わず吹き出してしまうようなネーミングや形の商品がありますが、今回紹介したトイレもそれらに通じるようなお茶目さと少しばかりの商魂が感じられ、見ていて微笑ましい気分になりました。どちらも比較的清潔に保たれており実用上申し分ないトイレなのでウイーンにご旅行の際にはお立ち寄りになってはいかがでしょうか。
それではまた。
<今回紹介したトイレ>
オペラトイレ
地下鉄Karlsplatz駅 オペラ方面出口のそば
モダンアートトイレ
フンデルトヴァッサーハウス向いのインフォメーションセンター内
<関連リンク>
ガンスケブラ
オペラトイレ、モダンアートトイレの他ヨーロッパ各地のトイレを紹介しています。
ウィーン一のスキャンダルなトイレ
オペラトイレの小便器は以前、女性の口のようなオブジェを装着して物議をかもしたそうです。

衛生陶器愛好家の、トイレ巡礼