2007年11月。転職に伴う有給消化の期間を利用して、私は1週間沖縄は八重山諸島を一人で回っていた。その1日1日は、日々慌ただしく過ぎていった東京の時間経過とは全く異なるもので、とても印象的かつ貴重な7日間であった。そしていま思えばこの7日間、当たり前だが食の記憶が常に横たわっていた。これもまた当たり前だが、その食の記憶は東京のそれとは違った。忘れないうちにその記憶を残しておこうと思う。
「舌を鍛える」2007年秋沖縄旅シリーズ
#1:いちば食堂の八重山そばで始まった八重山諸島旅行一人旅
まずはなぜ、沖縄の離島である八重山諸島へ行くことになったのか、について記しておこう。それは転職経験のある職場周りの知り合いに話に由来する。職を転じることによって生じる有給消化期間は、南の島(たとえばハワイやバリ島など)、でのんびり過ごしたものだ、と郷愁を込めて語る転職経験者の姿を幾度となく目撃してきた。そんなしみじみとした話を様々な方面から何度も聞かされるにつれて、「転職」イコール「有給消化」イコール「南の島で静養」という観念が刷り込まれてしまったのである。
全国取材に飛び回っていた時期があった。改めて数えてみると30道府県弱ほどは行ったことになる。さすがにそれだけ行っていると、ざっと6万を超えるマイルが自然と貯まっていた。このマイル数なら、余裕でヨーロッパにも行ける。(飛行機の利用が多くになるにつれ、マイルが貯まりやすいクレジットカードをつくり、飛行機運賃はもちろん、取材にかかるホテル代やレンタカーなどの経費、携帯電話代金など日常の費用も極力このクレジットカード経由にした。そのため加速度的に貯まりやすくなったのであろう)
いざ転職する段になって、じゃあ有給消化期間にこの豊富なマイルをどう使ってしまおうかしら、なんて考えはじめたわけである。最初は軽く「まぁヨーロッパも捨てがたいけど、ここは先人たちを見習ってハワイにでも行ってしまおうかしら」なんて考えていた。しかし、実際にかかるマイルを確認してみて気が変わった。
というのも、アムステルダム・パリ・フランクフルト・マドリード・ミラノ・ローマ・ロンドンといったヨーロッパの場合は55,000マイル、ハワイ(ホノルル・コナ)の場合は40,000マイル。(JALグループ国際線特典航空券マイル早見表より)それに比べて国内航空券の場合は国内一律15,000マイルであったのだ※1。(なんと韓国、ソウルも15,000マイル)
つまり、考え方を変えると次のようになる。
◎ヨーロッパに行くことは、国内旅行を3回することに匹敵
◎ハワイに行くことは、国内旅行を2回することに匹敵
「ヨーロッパ1回」と「沖縄3回」、「ハワイ1回」と「沖縄2回」・・・頭の中で天秤にかけて、出てきた結論は、「沖縄にたくさん行った方がなんか得のような気がする」。そういうことで、旅行先は沖縄に決めた。本島は高校の修学旅行で行ったことがあったので、どうせなら離島にしようと考えた。さらに八重山諸島の場合、訪問したことのある知人がおり、その知人からすばらしさを伝え聞いたり、また場合によってはその知人が、そのまた知人に連絡して良い宿を紹介してくれるというので、じゃあ八重山諸島にしようかしら、と決定のであった。
こうして八重山諸島への旅行が何となく決まったあとは、事前にガイドブックを購入し八重山諸島について調べてみた。
沖縄本島よりもさらに南に位置する八重山諸島は、中心となる石垣島をはじめ、有人島では日本最南端の波照間島・日本最西端の与那国島・西表島・黒島・小浜島・竹富島・鳩間島・新城島(上地島・下地島)由布島の有人島と尖閣諸島などの多くの無人島からなる。
島々はサンゴ礁に囲まれ、亜熱帯特有の自然景観に恵まれている。国指定の天然記念物も多数あり、自然の宝庫である。
かつては人頭税(人頭税)という過酷な税制に苦しめられたり、マラリアや大津波で多くの人命が失われるなど、苦難の歴史もあった。しかし、力強く生きてきた人々の気質は明るく、豊かな芸能文化を育んできた。古謡や伝統行事は大切にされ、今も生活の中に溶け込んでいる。
やえやまGUIDE BOOK―南国世果報体験 (〔2007〕) P2
なるほど、さすがに「諸島」というだけあり、島の数が多い。当初は、「じゃあすべての島を制覇してやろう」などという野心があった。しかしいろいろ計画を立てていくうちに「予算的にもそんなに泊まっていられないし、日帰りにせざるを得ない島が出てくると忙しい旅になってしまうのではないか。まだまだたくさん行けることだし、とりあえず初回は島々の個性を堪能できる旅程に焦点を当てたほう方が、旅が充実するのではないか」と考えるにいたった。最終的には気になるいくつかの島をピックアップし、優先順位をつけどんな順番で行くか、旅行パターンを複数立案してみることにした。
こうして数パターン立案した行程に飛行機の特典航空券の空席状況を反映させ、さらに八重山諸島への旅行経験のある知人やそのまた知人からいただいたアドバイスを投影させながら練り上げて、最終的に決定した行程が下記である。
<1日目>東京→(飛行機)→石垣島→(船)→波照間島
<2日目>終日波照間島
<3日目>波照間島→(船)→石垣島→(飛行機)与那国島
<4日目>終日与那国島
<5日目>与那国島→(飛行機)→石垣島→(船)→竹富島
<6日目>竹富島→(船)→石垣島
<7日目>終日石垣島
<8日目>石垣島→(飛行機)→東京
ポイントは、せっかくだから有人最南端の波照間島と最西端の与那国島は押さえておきたいという点である。そして両方を制覇したら、古き良き沖縄が残っていると伝え聞く、竹富島を巡り、最後に石垣島を堪能してこよう、そういうことにした。西表島なども興味があったのだが、私の中にある西表島のイメージと言えば一言「ワイルド」。今回は静養的なこともあったので、「ワイルド」さには自分の琴線に触れなかった。(いや、自分の西表島に対するイメージが異なっている可能性も多分にあるけれど)まぁ次の機会に、ということで。
こうして2007年11月の某日、私は早朝、最寄りの駅から羽田空港行きの高速バスに乗り込み今回の旅は始まったのであった。その旅程をたどってみよう。
▼羽田空港行きのバスの出る、早朝の最寄り駅にて
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震えながら朝5時前に空港行きの直通バスが出る駅で待つ。ちょっとはやく成田空港行きバスもやってきた。私もハワイを選んでいたらこっちに乗っていたわけだ。
▼高速上から東京を眺める
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ちょうど日の出の時間。東京もこれからせわしなく動き出すわけである。私は車内で、矢野顕子の「てぃんさぐぬ花」(いままでのやのあきこ所収)を聞いてテンションを高めていた。
早朝の空港は慌ただしい。以前に飛行機に乗れないことがあったので、今回はケータイからwebチェックイン。空港に到着したのは出発の20分前。水だけ購入し、飛行機に乗り込む。
▼こうしてわたしも機上の人に。
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早起きしたため、機内では寝ようと思ったのだが、興奮して眠れず。
▼石垣空港に到着。
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到着は朝10時前。11月なのに暑い。東京では考えられないくらい強い日差し。空港ですぐに半そでに着替えた。
▼空港の外にて
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目に飛び込んできたものは千葉ロッテマリーンズの応援宣言。
▼石垣の街の風景。
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暑い。
到着したのはいいが、これから波照間島に行く、ということ以外なにも決めていないので、とりあえず腹食事。石垣市公設市場の3階にある「いちば食堂」にて八重山そば定食を食べた。
ちなみにこの「いちば食堂」1階の公設市場で購入した食材の調理もしてくれる模様。ちょうど自分が来店した際には、おっさん二人が石垣牛のステーキ肉を市場で購入しこの食堂で焼いてもらっていた。(もちろんオリオンビールで乾杯していた)
▼これが八重山そば定食である。
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八重山そばにじゅーしーご飯、そして豆腐などの小鉢がついている。
「じゅーしーご飯」とは沖縄における炊き込みご飯を指す。これがまたおいしい。
じゅーしーご飯をほおばり、八重山そばをすする。大げさに言えば、ひとくちごとに、私の体内に沖縄が進入してくる感じ。それを私は受け入れるわけである。 八重山そばには、この地域独特のスパイス「ピパーチ」を入れて食べる。あの小麦の麺の食感とビハーチの香りは忘れられない。
さて肝心な八重山そばとはなにか?
先に紹介したやえやまGUIDE BOOK―南国世果報体験 (〔2007〕) より引用しよう。
そば粉でつくる本土の蕎麦と違って、沖縄・八重山そばの麺は小麦粉から作る。もっちりとした歯ごたえあり!
細麺で、色はラーメンのように黄色い。だけど、そばなんです。
具は三枚肉(豚バラ肉)の細切り&かまぼこ&島ねぎがオーソドックス。でもソーキ(豚の骨付き油肉)をのせたらソーキそば、野菜なら野菜そば、牛肉なら牛そば、ヤギ肉ならヤギそば・・・、とバリエーションがいろいろ楽しめるのもうれしい!
八重山そばがおいしいのは、八重山の水がいいからだといわれる。水がうまいから汁もうまい!
かつおだし(あっさり系)~豚骨味(こってり味くーたー系)まで様々!でも不思議と八重山そばで食べるからか、汁が濃厚でも案外食べやすいんだな。(P120)
なるほど、トッピングの種類によってそばの名称も変化する。つまりもっともベースとなるそばということらしい。とはいえ、店によって八重山そばもあっさりからこってりまで多岐にわたるわけだから、たとえば縦軸に「あっさり」から「こってり」までレベルごとに表記、そして横軸にはトッピングの数を表記したとしたら、このマトリクスが埋まるだけの「そば」が有るということだ。小さい島ながらすごい。それだけ日常的な食べ物なのだろう。香川のうどんみたいなものだろうか。
この店の八重山そばの味はあっさりだったかこってりだったか、記憶にない。というより、この食事が石垣島とのファーストコンタクトであったので、あっさり軸とこってり軸は自分のなかで自明ではなかった。ただおいしいという印象。とはいえ、蕎麦粉を使用していないわけだから、俗にいう蕎麦とは異なる。しかし小麦だからといってラーメンかと言えばそうでもない。もしもまたどこかで八重山そばを食べる機会があれば、このいちば食堂での光景をすぐさま想起するであろう。
食事の後は近くにあった公園を散歩。
▼近くにあった公園にあったモニュメントには、ここから主要都市までの距離を表している。
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東京よりフィリピンのほうが近いのだ。はるばる遠くまできたものだと、改めて思う。
▼空の写真を撮ってみた。
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入道雲がもくもく。11月のはずだが・・不思議な感じである。
▼さて、そんなこんなで石垣港離島旅客ターミナルへ。
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ここが石垣島と他の八重山諸島を結ぶ玄関口。石垣島以外の八重山諸島に行くほとんどのケースで立ち寄ることになる。自分も今回の旅で幾度と立ち寄った。
ターミナルの中に入り、波照間島行きの船の時間を確認。先ほどの本 を広げ、今晩の宿を探した。いくつか電話をかけたものの満室が続き、ようやくとることができたのは「星空荘」という宿。
出航の時間になったので船に乗り込み、今夜泊まる島、波照間島へ向かった。
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「舌を鍛える」2007年秋沖縄旅シリーズ
#1:いちば食堂の八重山そばで始まった八重山諸島旅行一人旅
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2008年4月より、私がよく使う航空会社のマイレージがリニューアルし、距離に応じてマイルは決まるようになった模様。たとえば、羽田⇔石垣は現在20,000マイルかかる。(その分東京→大阪などは12,000マイルになったりしている)