出版界は既得権益に徹底的に守られた世界です。既存の価値観や常識を覆さなければ、歴史ある大手と戦って勝ち目はありません。だから、僕は常に「顰蹙はカネを出してでも買え」と言ってきました。「あいつは何だ。何をやるか分からない」と思わせるようなことをしない限り、善戦はしても圧倒的な勝利は得られないからです。
人気アイドルだった郷ひろみの『ダディ』という告白記を出した時のことです。テレビや新聞ではなく、速報性からは程遠い単行本で、記者会見を開く代わりに離婚の真相を当事者に語らせました。それはあまりに常識外れで、業界の顰蹙を買うことでした。
しかも初版で50万部刷ったんです。普通なら3万~5万で始めるものです。決壊は100万部のミリオンセラーになりました。初版5万ならせいぜい15万部止まりだったでしょう。50万で始めたから100万部に届いたんです。
瞬間風速で一気に売り切る本だという”読み”がありました。口さがない人は「返本が多く出た」なんて言っていましたが、実際には全部売り切りました。他人には驚きでも、僕の中では「勝ち」を確信できるゲームでした。誰もが不可能だと思うことを、圧倒的な努力をしてリスクを埋め、鮮やかに勝つ。その積み重ねが会社のブランド力になるんです。僕はそんなゲームをずっと続けてきました。
(日経ビジネス 2007.2.26 P1 有訓無訓 見城徹【幻冬舎社長】)
たいがい夕食は会社にて、コンビニで購入したものを食べている。
その際は、だいたい会社にある週間の経済誌などを適当にピックアップしてそれらを読み漁りながら、カップラーメンをすすったりおにぎりをかじる。
その日はちょうど「日経ビジネス」を読んでいて、「なるほどなぁ」と思ったのであった。
しかし、そう思ったのは「顰蹙はカネを出してでも買え」という部分ではなく、「誰もが不可能だと思うことを、圧倒的な努力をしてリスクを埋め、鮮やかに勝つ。その積み重ねが会社のブランド力になるんです。」という部分。
私はまだまだ「顰蹙はカネを出してでも買え」というところで「なるほどなぁ」とうなずけるほどの者ではない、ということです。
しかし、「顰蹙はカネを出してでも買え」と行動規範を言語化するまでに突き詰めるなんてすごいことである。無意識的になんとなく「そうしたほうがよさそうだ」と思えることはあるけれど、一歩引いた視点にならないと、言語化はできないだろうし、一歩引くためには、相当にその行動規範を徹底しないとできないことであるから。
そのうち、この人の本、「編集者という病」も読んでみたいものである。
■今回紹介したもの
日経ビジネス2007年2月26日号

日経ビジネス・東洋経済・ダイヤモンドは、私の大切な夕食のお供です。