わが町の公衆トイレ紹介(2)

前回更新からかなり間が開いてしまいまして申し訳ないです。遅まきながら2007年もとぐろ系会議並びに衛生陶器愛好家のトイレ巡礼をどうぞよろしくお願い致します。一月末に無事に日本に帰国しまして、今後はもう少し更新頻度を上げられるかと思いますが、まだイギリス居住時のストックがまだ残っているためしばらくはヨーロッパのトイレの話題を書いていこうと思います。
さて、昨年10月の前回の記事で2週にわたって留学中に居住していた街の公衆トイレを紹介すると言ってから5ヶ月余りが経過してしまいました。遅くなって(もはや「わが町」ではありませんしね)しまいましたが今回はもう一軒の特徴的なトイレを紹介したいと思います。


昨年の夏ごろ街の中心部、以前「紳士の国」の移動トイレの記事で紹介した移動式トイレがあった辺りにそのトイレはオープンしました。少し奥まったところにあるため、大通りには「トイレはこちらです」とトイレの存在を誇示する看板が掲げられています。

ライムグリーンを基調としたお洒落な看板が示す方向へ、表通りから枝分かれしている細い路地に入っていくと看板から受けるイメージ通りのカジュアルな装いのトイレが姿を現します。

どうでしょうか、オレンジとブラウンの壁、そして控えめながらもさりげないお洒落感のある”Toilets”のサイン…。ほんの一瞬ですがカジュアルな服屋を思わせる外装はどちらかというと高級感や未来感の演出が多い日本の新しい公衆トイレとは違ったアプローチで新鮮です。

内部はというと日本の公衆トイレに慣れた筆者としては特に驚くべき設備はありません。しかし、イギリスの公衆トイレの中では格段に進んだ内容のものになっています。日本ではすでに当たり前ですが、手洗い器、小便器洗浄、大便器洗浄、そしてハンドドライヤーと各種操作がここまでセンサー化された公衆トイレはイギリスではまだ珍しいのです。特に小便器は今だに一定時間置きに一斉に洗浄されるタイプが幅を利かせており、このトイレのようにセンサー式が今後イギリスの公衆トイレの標準になることを期待したいものです。
しかし、このトイレで最も注目すべき点は一般の男女用トイレではなく、バリアフリートイレにあります。通常はロックされており、専用の鍵を持った人のみ入ることが可能なため筆者は実際に体験していないのですが、わが街の市役所のWebサイトにある紹介ページにはより利用しやすいトイレのための様々な工夫が紹介されています。その内容とは1)高さ調整可能な着替え用ベンチ、洗面器 2)車椅子から便器までの移動のためのリフト 3)広々としたスペースと言うもの。日本で急速に進んでいるオストメイト対応こそ盛り込まれていませんが、1)と2)は日本にないアイディアでより利用しやすいトイレのためのこだわりが感じられます。それもそのはず、何を隠そうこのトイレはイギリスでもまだ数えるほどしかない最先端のバリアフリートイレなのです!
このトイレに盛り込まれた数々の設備は地方自治体や障がい者のためのチャリティ団体などからなるコンソーシアムによって定められた”Changing place toilet”(着替えが出来るトイレ、でしょうか)のガイドラインに基づくものになっています。このコンソーシアムは現在のほとんどのイギリスのバリアフリートイレが充分利用者の立場に立った設計になっていない現状の改善を目指して、前述の可動式ベンチやリフトなどの装備を盛り込んだ真の意味でのバリアフリートイレとして”Changing place toilet”を提唱し、その普及に努めています。実は私の住んでいたノッティンガム市はこのコンソーシアムに参加しており、このトイレも総工費約1億1500万円を投入して他都市に先駆けてこの基準を取り入れたものとなったようです。市役所のホームページで誇らしげに紹介するのもうなずける力の入れようです。
このトイレは前回紹介した昔ながらの公衆トイレとは今後の時代の要求に答えるための新しい発想をふんだんに取り入れていると言う点で対極にあるトイレであると言えると思います。誰もが使いやすいトイレのために有志の団体が統一の基準を設け、それを推進すると言う精力的な動きには特筆すべきものがあるのではないでしょうか。今はまだ数は少ないですが今後イギリスのバリアフリートイレの標準となりそうな予感がします。イギリスの公衆トイレの充実とノッティンガム市の「新星」が今後末永く市民に愛されることを願って今回のコラムを締めたいと思います。
それでは。
<今回紹介したトイレ>
ノッティンガム グレイハウンドストリート公衆トイレ
<関連リンク>
http://www.nottinghamcity.gov.uk/sitemap/community_and_living/changing_place_toilet.htm
ノッティンガム市による紹介ページです。紹介用の冊子がPDFでダウンロードできるなど力が入っています。
http://www.changing-places.org/
Changing places toiletを提唱するコンソーシアムのWebサイトです。

衛生陶器愛好家の、トイレ巡礼