前回、北温泉のことを書いた。つげ義春が何度も紹介していることも。
つげ義春は、漫画家であるが、温泉評論家になれるぐらい(?)温泉に詳しいらしい。
正津 つげさんはねえ、温泉評論家なの。よく知ってんだもん。温泉評論家と言えば、あなたに教えてもらった大石真人さん、あの人なみにメシ食えるよ。
つげ ああ、どうでしょうねえ。あの人もずいぶん温泉の本出してるし。
正津 だって、あの人だけでしょ、今は。
つげ そうでもないんですけど、あの人詳しいです。
正津 あの人は詳しい上に正しいもんね。いやあ、温泉評論てのは面白いかもしれないね(笑)。
つげ 食えるかもしれない(笑)。
正津 食えるよォ!
マキ そう言えば、そういうのないの?
正津 いや、大石真人さんっていう人はすごい。「全国秘湯めぐり」とかほとんど大石さんがやってるんだよね。
つげ 他の旅行案内作家がやってるのは、古い記事が多かったりするんですよね。写真なんかも古いの使ってて。現実に行ってみると全然イメージ合わなかったりするんですよ。でも大石さんは、わりと繰り返し同じ所へ行って、新しい情報載せてるんですよね。
(つげ義春 正津勉「対談 つげ式生活の最近」 つげ義春『旅日記』旺文社文庫1983年所収)
![]()
私は、ここで出てきた大石真人という人物が気になり、『全国温泉ガイド200選』(実業之日本社1994年)と『温泉の文化誌』(丸善ライブラリー1995年)を買った。
その中に、北温泉に関する記述もある。
まず、『温泉の文化誌』から引いてみよう。
しかも、このようにして、地中で形成され、湧出した温泉の効果については、湧出後なるべく早く利用されないと効果がうすれるといわれます。これは温泉が湧出後、刻々とその性質が変化しつつあることを示しており、この現象を温泉の老成、または老化と言います。したがって、四キロも五キロも引き湯したものは、源泉の湯と、著しく性質の違うものであります。たとえば、日光湯元と中禅寺温泉は源泉がたとえ同じでも、性質はかなり違うものであり、大丸や北温泉から引いた那須高原の諸湯も源泉と同じ効果は期待出来ません。
那須高原のリゾートスタイルの温泉ホテルは、ほとんど奥那須の大丸あるいは北温泉からの引き湯です。
建物は古めかしいが、お湯は新鮮なのだ。
そして、こんなことも言っている(これは北温泉に対して言っているのではないが)。
温泉地はほとんど産物に恵まれていないのが、原則ですから、おいしいものだけ食べにゆくなら、絶対にやめてほしい。そんなことを期待していったら大損です。温泉はあくまでも温泉に期待してゆくものです。
北温泉で自炊をした我々は正しかった。
私は北温泉の料理を食べたことがないが、大石真人の言う「温泉付料理屋」ではないのは確かである。
しかし、飲みすぎたのは正しくないか。
そして、『全国温泉ガイド200選』にはこうある。
温泉とは、まさにこれだ!
温泉の原点ここにあり。東京からほど近い表那須に、こんなところがあるとは、まさに奇跡だ。
全くだ!
これからは、大石真人に従って温泉に行くのも良いかも知れない。
北温泉の帰り、那須湯本の鹿ノ湯に入った。
温度が異なるいくつかの湯船からなり、高温の湯船では地元の人(?)が砂時計を持ちながら真っ赤になって入っていた。
私も少し入ったが、強情灸的熱さだった。
最後に『温泉の文化誌』から。
栃木県那須湯本の共同浴場鹿ノ湯には数種類の温度の湯がそろっていますが、お風呂というものは一度違っても、かなり熱いし、体に与える効果も違うので、あまり高い温度のお湯へ入ることは、たとえ短時間でもおすすめできません。
これを先に読めば良かった。