以前水・石鹸・乾燥の3つの機能が一つになった手洗い器を紹介した際、日本の電気製品の特徴である一つのものに様々な機能して付加価値を高めるという一面を持った日本的な製品という表現をした記憶がありますが、どうやらそれはちょっと違ったようです。というのもここイギリスにも手洗いに関わる全ての動作をボウル内で行う「完全なる自動化」というまったく同じ志を持った製品の存在が確認されたのです。そういえば以前のコラムでも「移動することなく手洗いの一連の動作を完結できるので合理的なアイディア」とも書いていました。新機能に敏感な日本人だけでなく合理主義のヨーロッパの人々にとってもこのアイディアは魅力的だったのかも知れません。今回はイギリスはロンドンで活躍する多機能手洗い器の使用感をレポートします。
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こちらが実物の写真です。乗り物のトイレにありがちな質感に加え、水栓とボウルが一体になった非常にシンプルなデザインは日本製のそれのような高級感の演出ははじめから考えていないことを端的に表現しているかのようです。「何もすごさをアピールしたくて多機能なわけじゃない、こうするのがより合理的だからこうしているまでだ」というメッセージが感じ取れます。この手洗い器は地下鉄の駅で発見したものですが、これが数台並んで設置されている様はまさに「機能的」の一言で、無駄なものをそぎ落としたスマートな印象でした。
さて、写真を良く見ていただくとボウルの上部になにやら金属のようなものが付いているのが確認できるでしょうか。付いている位置から想像されるとおりこの部分から水・石鹸・温風が出てくるのですが、その3つの機能が集約されている割に小さいと思いませんか?ハンドドライヤーとしての機能をきちんと果たせるだけの風量があるのかという疑問と同時にそれぞれの機能を使う際に手をかざす位置が分りにくいのでは?という疑問が日本の多機能手洗い器に慣れた私達は考えてしまうと思います。でもそんな心配は要りません。というのもこの手洗い器、全ての機能を作動させるには一回手をかざすだけでいいのです。つまり最初に金属部分の下に手をかざして作動させると後あらかじめ設定された一定時間の間水→石鹸→水→温風の順に出されて自動的に止まるという仕組みになっています。
これについてははっきりとした理由は分りませんが、せっかくボウル内で手洗いの一連の動作が出来るのならそれを作動させるセンサーも一つにしてしまおうという「更なる合理化」を狙ったものとも考えられますし、はたまた長時間手洗い器に滞在することを防ぐ目的もあるかもしれません。目的がどうであれそれぞれの機能にセンサーが着いている日本製に慣れた身からするとこの装置は少し使いにくいなという印象を受けます。また、急いでいる人などは全ての機能を使いきらずに、例えば水で洗うだけなどでその場を去ってしまう可能性も十分にあり、この場合は石鹸と水、そして時間(作動している間は操作を受け付けないので次に使う人は全行程が終了するまで待っている必要があるのです。)のロスにもつながります。
とはいえ、これも文化の違いの一つの現われだと考えればこの手洗い器もなんだか興味深いものになる気がします。「郷に入らば郷に従え」とは良く言ったもので「一度センサーが反応すれば最後まで作動するようにすれば問題ないじゃないか」という手洗い器側の主張を「ああ、そういう考え方もあるよね」と広い心で受け入れてみると機械に身を任せて手を洗うという行為も楽しいものとなるのではないでしょうか。
それではまた次週
<今回紹介したトイレ>
ロンドン地下鉄 ピカデリーサーカス駅