
過去と未来という時間の概念は、人間が勝手に作った。
過去の記憶があっても、それは心が刻みつける、美しくも変形してしまった記憶でしかない。
「BROKEN FLOWERSパンフレット」P26
HIROMIXの言葉。「人生に、恋に疲れた大人のあなたに」と題された、映画「BROKEN FLOWERS」のパンフレットより。
なるほど、そのとおりだなぁ、と思った。そしてこの言葉がどうしてここまで説得力を持って、私に受け入れられたのか、それはこの映画がとても良かったからに他ならない。
この映画はJim Jarmusch監督の「BROKEN FLOWERS」。ひょんなことから男が過去に交際した女性たちに会いに行く、というもの。ポイントは「会いたくないのに会いに行かなくてはならない」という点である。印象的なのは主役のBILL MURRAYの表情。女性たちに会いながら、苦々しいというかなんともいえない表情でいるのがとても良い。
この傑作の真実は、ほとんど演歌なエチオピアン・ジャズにある。これほどアメリカの風景に合わない音はない
と、ミルクマン斎藤も語っているが、そうなのだ。男が過去の女性に会いに移動する際にかかるこの音楽の不穏さ。ここに私はBILL MURRAYの気持ちを見出してしまった。ごわごわとぐにゅぐにゅと、何色もの絵の具を水面に垂らした時のマーブル状というかなんというか。それは過去という「美しくも変形してしまった記憶」とこれから会わなくてはならない「未来」を結びつけることの違和に対する暗示として受け取った。
さらにHIROMIXは続ける。
過去と未来を無理に融合させようとすると、A型にB型を輸血するくらい、不自然なことなのかもしれない
。
うーん、いい映画を見たら、必ずパンフレットを買わねばならないなぁ。より深く味わえる。
(だから私は「嫌われ松子の一生」のパンフレットは買わなかった)
BILL MURRAYが好きなのだろうな。「Lost in Translation」も良かったし。この点も再認識しました。
■今回紹介した言葉
映画「BROKEN FLOWERS」パンフレットより