今回は前回のコラム執筆中に思い出した非常に希少価値の高いTOTO製品についてお話しようと思います。「エクセルシアシリーズ」と銘打ったこの製品は先週の冒頭で紹介した製品たちのように高級路線の製品でしたが、デザインよりもひたすら高級感を追求した製品であるという点でZAZAやXstageと異なっています。発売年は定かではないのですが、1990年のTOTO総合カタログには載っているのを発見したのがこの便器との出会いでしたからそれより少し前のデビューだと思われます。まさにバブル真っ只中と言った時期に生まれたと思われるこの便器ですが、TOTOの名をあまり前面に出すことがなかったZAZAと違い、まさにTOTOの名を背負って生きたという重みをそこはかとなく感じる便器となっています。これからそんな「TOP OF TOTO」な便器の生い立ちを振り返ってみることにしましょう。
今TOTOの便器ラインナップの頂点にある製品といえば言うまでもなくネオレストEXですが、それ以前の初代ネオレストやウォシュレットQUEENの世代においてはどうでしょう。この両者も現行ネオレストのようにTOTOの技術のショーケース的な役割を果たしていましたし、同時期に発売されていたZAZAの方は各デザイナーの個性が前面に出され、TOTOから距離を置いたプロジェクトという印象がありましたから「TOP OF TOTO」としての資質、条件は十分に整っていたと考えられますが、私の目にはエクセルシアシリーズの存在感の前には両者はまだまだ軽く映ってしまうのです。
エクセルシアシリーズの近影はこちら
いかがでしょう、この存在感。時代とともに最近では珍しい直線的なデザインがさらに風格を増しています。ホワイト、パステルアイボリー、そして黒(!)という浮世離れしたカラーバリエーションも素敵です。ページ上部にある製品の説明文にもthe highestという最上級の表現がふんだんに使われ、なおかつcraftsmanshipという単語まで登場しています。職人の技能、熟練などを意味するこの単語に恥じない便器、少なくとも今の日本には存在しないと思います。このページの他シリーズの説明文にもここまで力の入った表現は使われていません。
この便器との出会いは私が幼い頃TOTOの総合カタログを見ていたときでした。私は当時すでにウォシュレットなどの多機能なトイレに惹かれていたのですが、このウォシュレットも着いていない、シンプルな便器はその存在感で私のページをめくる手を止めたのです。この当時私のお気に入り便器だったワンピース便器をしのぐほどのエレガントな外観やエクセルカラーがメインのカラー構成(当時は上記のブラックのほかにブルーやワインレッドもあったと記憶しています。)など魅かれる部分はたくさんありましたが、その中でもカタログにコーディネート案として載っていた空間のありえなさに度肝を抜かれたものです。欧米風にトイレ・バス・洗面が一まとまりになっていてそれらが全てエクセルシアシリーズで統一されているのですが、空間の使い方が「贅沢」の一語に尽きるもので、その空間のために10畳以上のスペースがあるんではないかと思うほど広々していたのです。インテリアも全体に石が使われており、バスタブ・便器・ビデ(!)・洗面など全てがエクセルカラーで統一されている・・・。世界のセレブリティが住んでいる様な豪邸の世界観をTOTO総合カタログに持ち込んだかのような、いわば日常の中に非日常を見たような、そんな感覚でした。
先代ネオレストの時代の末期位までは生産されていた記憶があるのですが、この製品を見かけたことは今だかつてありません。やはり全身から発せられる「住む世界が違う」オーラが壁となったのでしょうか。確かに現在の「TOP OF TOTO」であるネオレストEXの場合、ほぼ設置する住宅を選ばない雰囲気を持つのに対し、この便器は設置するにはあのコーディネート例のように無駄と思えるほどに贅沢にスペースを使える位広い家じゃなきゃだめなんじゃないかなどいろいろ余計な懸念が浮かんできます。例えば今流行の狭小住宅の場合、ネオレストEXは問題なくマッチしますがエクセルシアシリーズは完全に場違いに感じられるでしょう。
こう考えると、エクセルシアシリーズにとって日本は住みにくい環境だったのかもしれません。現在もアジアや中東では健在らしいですが、確かに中東の豪華なリゾートなどにこれが置かれていたらとてもサマになることでしょう。しかし、日本にも同様にこのような便器を好む人は少なからずいるはず。ハイテクのネオレストに対して重厚感・クラフトマンシップのエクセルシアという形で存続させても面白いなと思うのは私だけでしょうか。もちろんどちらも兼ね備えていれば鬼に金棒ですが。
最後になりましたが、一度はこのエクセルシアシリーズの実物にお目にかかりたいものです。何しろ見た目だけではなく、この便器は私の大好きなサイホンボルテックス式なのですから。レバーの感触も操作してすぐに聞こえる「ボコッ」という空気の入る音も、きっとさらにワンランク上の響きのはず。想像するだけでも楽しいです。
それではまた次週。