今回は二週にわたってウォシュレットの製品展開を振り返っていますが、先週のGシリーズに続いて今週はSシリーズについてのお話です。機能充実のGシリーズに対して機能を絞ってお求め安い価格を実現というのが売りのSシリーズですが、Gシリーズの機能が充実していくにつれてSシリーズのほうにも徐々にGシリーズの機能が移植されていき、それによってここ十数年の間に急速にその機能を充実させてきました。最近ではよく売れる価格帯の製品なのかディスカウント店などでは上位機種のアプリコット以上に幅を利かせているところも見かけますし、パブリック向けのPシリーズのベースにもなるなどまさにウォシュレットの「影の主役」のような存在感を持つに至っています。今回はそんなSシリーズの展開を振り返ってみることにしましょう。
筆者の実家はおよそ15年前のSシリーズであるウォシュレットSXⅡを1階のトイレに使用しています。この時点ではノズル無し、ビデ洗浄無しという初期のウォシュレットSシリーズの無い無い尽くしからは脱却を図ってはいるもののノズルは細くて頼りない形状をしており、もちろん水量も十分とは言えないものでしたし、ムーブ洗浄などの洗浄機能はおろか便座便ふたソフト静止すらついてない(もっとも、上位機種のGXⅠですらついていなかったのですが)まさに廉価モデルといった雰囲気だったのです。今回このコラムを書くために久々に使ってみた(普段は2階のGXⅠを使用しているのです。)のですが、水圧を最大にしてもノズルが出なくなっていました・・・。ノズルが当時のGシリーズのように電動式ではなく、水圧によって出す方式であることと、給水フィルターのお手入れを怠っていたことが原因だと思われます。
それでも興味深いのが現在では上級機種に採用されている瞬間湯沸し方式がこの当時はSXに採用されていた点です。GXは貯湯式のため便座の脇に大きなタンクがありますが、確かにSXにはタンクと思しきものはついていないのです。温水を貯めておくよりも瞬間的に作っていくほうが本来は合理的なはずですから上位機種もこの方式を採用しておかしくないはずですが、当時のヒーターの出力がGXシリーズの吐水量に対応し切れなかったのが原因でしょうか。実際、Sシリーズの少ない吐水量でも使用中はヒーターの音と思われる「ゴーッ」と言う苦しそうなノイズが入ります。
そんなSXシリーズからSα、S、SA・SB・SCと進化するにつれてそれ以前のGシリーズからのフィードバックとして様々な機能が追加されていきました。着座センサーやムーブ洗浄、便座便ふたソフト静止、そして脱臭などは他社が標準装備とする頃に足並みをそろえるように追加されていきましたが、最近ではTOTO独自のやわらか洗浄の追加など独自色を出し始めています。
このSシリーズの進化をGXⅠユーザーの筆者は「どんどん我が家のGXⅠの装備に近づいていくな」と思いながら見ていました。実は相当前にSシリーズに脱臭・便座便ふたソフト静止・ムーブ洗浄が着いたあたりである点では追い越されていたのですが、わがGXⅠには最後の砦である「ノズル位置調整」が残っていたのです。しかしそのノズル位置調整もとうとう今年2月デビューの新SB・SCに搭載されることになってしまい、GXⅠの機能的アドバンテージはまったく無くなってしまいました。完敗です。まあ、これは工業製品全般の進化の過程ともいえるものなのである程度歓迎すべきものだと思いますが。
そんな進化を続けるSシリーズですが、ことライバルとの比較となるとトップシェアのメーカーらしくどちらかというと「守り」に徹した製品展開となっている気がします。先週のエントリーにコメントを寄せていただいた便所工房さんのおっしゃる通り、INAX・ナショナルなどのライバル社の同価格帯の製品と比較すると新しいSB・SCはよく言えばシンプル、悪く言えば安っぽいデザインとなっているような気がします。また、機能的にもコンパクトでワイヤレスリモコン装備のナショナル、スーパー節電やマッサージ洗浄など充実機能のINAXに対して無難なTOTOといった印象を受けます。かといって乾燥・脱臭付きの「全部いり」SシリーズであったSAに代わってSシリーズの上位機種となったS1・S2はあそこまで充実させるとアプリコットの下位機種との住み分けが難しく選ぶ側も戸惑ってしまいます。次の世代のSシリーズでは差がついたS1・S2とSB・SCとを再編する大きな変化を期待したいところです。
何はともあれ新しいSシリーズもしばらくの間普及仕様のウォシュレットとして今後あらゆるところで見かけることになるでしょう。少しづつでも機能を充実させることで温水洗浄便座全体のスタンダードを押し上げて行くその姿には「影の主役」ならではの努力が感じられて好感が持てるものです。上位モデルの進化には「今度はどんなすごい機能が着くんだろう」という期待がありますが、Sシリーズのモデルチェンジには「今度はどんな機能が低価格で手に入るようになるんだろう」という身近なわくわくがある気がします。そんなわくわくを胸に新SB・SCと対面できる日を楽しみにしている今日この頃です。
それではまた次週
<関連リンク>
ウォシュレット新SB・SC 製品情報
これが新しいSB・SCです。今回のキーワードはユニバーサルデザインのようです。