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2005年12月25日

たましいは肉体とも感情とも別の僕らの気付かない所にあって試練の時にのみ、反応し、成長するものだと思います。

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マンガの神様 マンボさん.........「第九」を知ってますか.........?
マンボ好塚 え......ハイ、あのベートーベンの交響曲の......
マンガの神様 僕の勝手な翻訳ですが.........
マンボ好塚 ...ハイ。
マンガの神様 この地上で.........真に私のものと言える......たったひとつのたましいを勝ち得たものは、集い......歓喜の歌を歌う資格がある。出来なかった者は泣きながら我等の集いから立ち去れ......と、なかなか手厳しい内容の歌詞です。...僕も同感です。
マンボ好塚 先生...僕は、僕の作品にはその資格が...
マンガの神様 たましいは......肉体とも感情とも別の......僕らの気付かない所にあって...試練の時にのみ、反応し、成長するものだと思います。僕の事を競争心の強い子供じみた作家だと言う人が居ますが、互いの自己陶酔を競い合ったって何にもならない。たましいを、さげないように...そのことだけを...僕は競いたいのです......競いましょう、マンボさん。あなたには、その資格があるのだから。あなたにも、そして誰にでも......
(「編集王16巻」P199-206)

これは私の一番好きな漫画「編集王」の最終巻のラストシーンでの一節(※)。17歳のとき読み始めたのが最初。古本屋で買っていっきに読んだ。

漫画生産システムの周辺で、葛藤する漫画編集者と漫画家ら関係者を描いた物語である。出てくる人間たちが熱く、「私もこうありたいものだ」と高校生ながら感じた記憶がある。マンボ好塚という漫画家を巡るくだりでは号泣もしてしまった。

そもそもこれ先日退職された、某デザイン会社のデザイナーさんに贈った言葉でもある。彼女は年齢的に同世代で、右も左もわからない新人のときからよく一緒に仕事をさせていただいた。「ああだ、こうだ」と喧嘩のような議論をいろいろしながら、いっしょにひとつのものをつくっていった(つもりである)。

仕事以外でも幾度か酒を飲んだり、たまに遊んだりもさせていただいたのだが、なにしろ熱い人で、情熱については、尊敬に値する人だった。

一緒に制作したあるカタログのなかに、お互い納得できないままに、つくりあげてしまったものがあった。退職が決まった後の、ある酒の席のときに、「今度あのカタログが改訂になったとき、今度こそお互いが納得のできる完成度の高いものを一緒に作りたかったっス」とふと漏らしてしまった。

そうしたら、退職される当日に、「あの酒の席での話、私も同感でした」としたためられた手紙をいただき、とても感動してしまった。

帰郷される前日に送別会があったのだが、年末ということもあり山積した仕事が終わらず、参加することができなかった。そこで、飛行機にて帰郷される当日に、送別会に出席できなかった謝罪とともにこの言葉を贈ったのであった。

お互いたましいをさげることなく、成長させていきましょう、そしてまた、いつの日か一緒に仕事をしましょう、と思ったのでした。この言葉を伝えつつ、自分への戒めにもさせていただきました。



※ 素晴らしいのは、その描かれる葛藤が単純な人間関係に終始することなく、宮沢賢治の詩などを引用しながらポエティックな世界へ飛躍していくところにある。(私はこのように日常から出発しながらも、最終的にとんでもないところへ連れていってくれる物語が好きなのだろう、多分。)

おそらくこれは宮台真司がいうところの「端的なものに出会っている」作品である、ということではないか、と理解している。

「「端的なもの」に出会っているとき、僕たちは例外なく、「社会」の中ではなく、「世界」の中に、自分自身を見出しているということです。君はいい人かどうかとか、不摂生か否かとか、ちゃんと努力したかどうかとか、誰かが何をこうしたからだ、とか、世間が自分を認めてくれているかどうかとか、そういう社会関係の領野の中には回収できない事象に出会っているということです。」
(「サイファ覚醒せよ! 」P168-169 宮台真司・速水由紀子 筑摩書房)

このふとたち現れる「世界」に触れたとき、名言は生まれるのだろう、と思う。この「端的なもの」は今後も考え続けていきたいテーマである。

作者の土田世紀は、いま映画化されている「同じ月を見ている」も原作だったりする。原作も読んだけど、やはりただの人情話に終わらず、終盤「端的なもの」に出会うのだ。(映画はどうかわからないが)それがとてもよい。

この件もまたあとで検証してみたいと思う。


■今回の引用元
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編集王 16  ビッグコミックス 土田世紀)

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