トイレで手を洗ったとき、その後処理としてはどんな方法がお好みでしょうか?ホテルのロビーなどで見かける真っ白なハンドタオルはその使用感といい自分専用で使い捨てに出来るという気分的な満足感といいやはり最高級の処理方法かと思いますが、このようなサービスは手間が掛かるためどんな場所でも安定して提供できるというものではありません。多くの人が利用するような公共施設のトイレには向かない方法でしょう。
上記のタオルのようなある種別格の方法を除くと、今考えられる方法はロール式のタオル、使い捨てのペーパー、そして温風による乾燥の3つです。まずロール式のタオルについては、前に使った人がタオルを引き忘れていたりするとそれに気づかずに水分を含んだ使用済みのタオルに触れてしまう可能性と、タオルが巻かれた状態で垂れ下がっているため指と指の間など細かいところを拭こうとするときにタオルが突っ張って使いづらいなどの欠点があります。ただ、個人的にはタオルを引くときの「ガチャガチャ」という音は結構好きではありますが・・・。そして使い捨てのペーパーに関しては一人に付き一枚分の紙が使えるため使い勝手はなかなかですが、紙を使うためゴミが溜まってしまいトイレの美観を損ねるという欠点があります。
そして、今回話題の中心にするのが温風による乾燥です。なぜこれを話題の中心にするかといいますと、近年この3つの中でも特に目覚しい進化を遂げているからです。もともと前述の2つの方法に比べて長期的に見たときに低コストであることなどのメリットはあったものの、利用者から見ると風圧が弱く乾燥に時間が掛かるため使っている途中で最後まで乾燥するのを断念したくなるような機種が何年か前まではほとんどだったのが、最近では低コストという本来のメリットを継承しながらすぐに乾くという利用者側に対しての価値も提供する機種が続々登場してきたのです。今回はそんなハンドドライヤーについてのお話です。
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(左)90年代始め~半ばごろまでのクリーンドライ
(右)90年代半ば~終盤(または2000年代始め)ごろのクリーンドライ。デザインがすっきりとした印象になり、商品名のロゴも大文字になりました。
一昔前のハンドドライヤーは特にメーカーごとの違いというのはなく、どこのメーカーの商品でも平等に乾燥には時間がかかったものです。上の画像のTOTOクリーンドライのようにモデルチェンジもありましたが、それは主にデザイン変更などといった細かい点がメインで、性能的には特に変化はなかったと記憶しています。TOTOやINAXはもちろん、DUSKINやその他多くのレンタル会社と思われるマークをつけた製品も一時は多く見られ、そのバリエーションは多岐にわたっていました。その中でも当時筆者がお気に入りだったのはまさにこんなデザインのハンドドライヤー。日本では見なくなりましたが本国のアメリカでは今でも製造されているということはなかなかの長寿製品なのでしょう。頑丈そうなメッキのエアダクトやボタンが以前紹介したカルミックのサニタイザーに通じる貫禄をたたえていて、今風のお店にも似合いそうなデザインです。
しかし、そんなハンドドライヤーの世界にも転機が訪れます。95~96年ごろでしたでしょうか、筆者が初めてこの製品に触れたのは。そのハンドドライヤーは明らかに今までのそれとは違う姿をして洗面所の側という定位置に佇んでいました。まず違ったのはその大きさ。今までのハンドドライヤーが縦横の大きさがほぼ同じだったのに対し、これは縦に長かったのです。そして取り付けられていた位置も今までの製品よりはるかに低い位置でした。
もう、お分かりでしょう。私がこのとき出会ったのは今ではすっかりポピュラーになった三菱電機の「ジェットタオル」だったのです。その形もさることながら、手を差し出すのではなく隙間に手を差し入れるという使い方にも衝撃を覚えました。驚きはそれだけでは終わりませんでした。恐る恐る手を差し入れると・・・。
「おおっ!」
未体験の風圧でした。手を差し入れて1~2秒ほどのタイムラグの後、手の両側に向けて勢いよく風が出てくるではありませんか!今までの「もわ~っ」という擬音語が似合うような風圧に慣らされた私は戸惑いましたが、驚きはその後、今までのハンドドライヤーで乾かすときの半分程度かそれ以下の時間で手が乾いてしまったことです。そう、このハンドドライヤーは手のひらの水分を温風で「乾かす」のではなく風圧で「吹き飛ばして」いたのです。
使用後、「いずれすべてのハンドドライヤーはこうなる」と感じました。それだけこの製品の使用感は印象的だったわけです。温風で手が完全に乾いたときの爽快感は魅力的ですからもともとハンドドライヤーは好きだったのですが、「乾燥が速くなればいうことないな」と思っていたところにこの製品と出会ったわけですから、そう思ったのも無理はないでしょう。実際、現在では各社とも高速乾燥を売りにした製品を主力として送り出しています。今までのタイプのように手を差し出すタイプで高速化を図った製品も登場しました。こちらは両側から風を出すことは出来ないため、手を差し入れるタイプに比べ若干時間は掛かりますが、それでも以前の製品と比較すれば比べ物にならないくらい高速化されています。
今回はハンドドライヤーに焦点を当ててみましたが、この製品は家電製品などで見られるようなあるメーカーが画期的な製品を出すと少ししてからそれに追随する製品が各社から発売され、さらに少し経つとそれが標準となるというパターンがはっきりと現れた例だといえます。他にトイレ周りの製品で言うとタンクレストイレがこの変化に匹敵するかと思いますが、トイレというのは様々な構成要素によって成り立ち、それぞれがこのように何年に一回か画期的な進歩をして進化しているのだということを再確認させられます。特にこのケースはその進歩を牽引したのがトイレメーカーでなく電機メーカーであることも面白い点です。トイレの世界が思いのほかいろいろな業種に開かれたものであることを再確認したところで今回のコラムを閉めたいと思います。
それではまた次週
<今回紹介したトイレ>
90年代初頭~半ばごろのクリーンドライがあるトイレ
首都高速本町駐車場 南入口側
地下鉄日本橋駅または三越前駅から昭和通りへ、江戸橋ジャンクションそば
90年代半ば~終盤(または2000年代始め)ごろのクリーンドライがあるトイレ
鎌倉七里ガ浜海岸 有料トイレ
江ノ島電鉄線 七里ヶ浜駅より徒歩2分