真新しさの感じられる内装や設備を持ったトイレを見ることは楽しいものです。そしてそれが以前にも取り上げた松屋銀座やホンダウエルカムプラザのような目に楽しく、なおかつ使っても心地よいトイレならなおさらいいものです。しかし、そういった新しさなど目を引く要素がなくてもなぜか独特の魅力を持つトイレというのもあります。なんていうことのないトイレのはずなのに使ってみるとなぜか落ち着くような、そんなトイレ・・・。
お寺のトイレはそんなトイレの代表ではないかと筆者は考えています。とにかく清潔に保たれていて、質素に見えるつくりもよくよく見ると全体の調和が取れたいいデザインになっている。思わず使っている側も心が洗われるようなそんな気分になります。今回はそんなお寺のトイレを二ヶ所、二週にわたって紹介したいと思います。このコラムでは初めてタイトルの「巡礼」にふさわしい内容になりそうです。
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今週は福井県にある永平寺というお寺のトイレの紹介です。ここは曹洞宗の大本山だそうで、大きく、厳格な雰囲気のあるお寺となっております。回りの環境も良く、修行僧も素人目からではありますが真面目に修行に励んでいる印象を受け、全体的に好感の持てるお寺でした。
建物内は複雑に入り組んでおり、トイレも新しいものから比較的年月の経ったものまで何箇所かありましたが、その中でも拝観の順路の最初のほうにある比較的新しい方のトイレを利用し、詳しく見てきました。いくつもあるトイレの中でもなぜかこのトイレ(仏教用語では東司と呼ぶそうです)だけは拝観料を払ったときにもらえるパンフレットにちょっとした解説が載っているなど特別扱いされています。正面に「烏芻沙摩明王(うすさまみょうおう、見も心も清らかにする作法を示しているとのこと)」が祀られていることからこのように記述されているのだと思いますが、同時にトイレが1997年に改装されていることなどにも触れてありました。
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まだ真新しい障子の引き戸を開けて中に入るとまさに私がイメージするお寺のトイレ、と言った印象の空間が広がっていました。どの画像にもゴミがまったく見られないことからも分かるように非常に清潔ですし、大理石を使った壁は派手ではない、控えめな華やかさを与え、さらに窓枠の木が温かみをプラスしていることによって、「どことなく居心地のいい」空間を作り上げています。また、こういった日本風の内装を持つトイレだと普段はあまり気に掛けない和式便器がなぜか凛としたたたずまいに見えるから不思議です。
そしてもう一つ印象的だったのはこちらの貼り紙
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東司をきれいに、と書かれたこの貼り紙からはトイレ掃除も修行の一部であるという修行僧の思いをひしひしと感じることが出来ます。「トイレをきれいにしています」という修行僧からのメッセージだけではなく、この貼り紙を見た利用者が素直に感心できるようにトイレを常に清潔に保つという作業に対する自信と誇りのようなものを感じる貼り紙です。この貼り紙はこれに書かれていることに違いなくトイレが清潔な状態になければまったく響くものがないでしょうからね。
最後の「今日もきれいにそうじをしよう」には利用者が「それなら私もきれいに使おう」と清潔な利用を自然に促す効果も少なからずあるような気がします。個人的には時々見かける「いつもきれいにご利用いただきありがとうございます。」よりも押し付けがましさがなく、好感が持てます。「トイレをきれいにするという心がけが、ひいては自然までも清らかにする」という発想は私も是非取り入れたい考え方です。
と、永平寺の訪問では気の引き締まるような清潔感のあるトイレに触れるのを通じて仏教の考え方の一部に触れることが出来ました。「トイレ掃除も修行の一部」であることはなんとなくわかっていましたが、食事を大切にするからこそ排泄とその処理も、という理由からであることなどは初めて聞くことでした。人と自然が清らかに生きるためにトイレの存在を重視した考え方には共感できるものがあると感じました。
さて、清潔感あふれる「東司」を通してトイレに対する価値観について考えさせられた永平寺の訪問でしたが、次週は京都で発見した今回とは少し雰囲気の違うトイレです。同じように清潔で居心地のよいトイレなのですが、大理石によりグレー基調の寒色系でまさに気の引き締まるような雰囲気の永平寺に対してこちらはそこはかとない「温かみ」が感じられるトイレとなっております。
それではまた次週
<今回紹介したトイレ>
永平寺 東司
JR福井駅より京福バスで30-40分程度
<関連リンク>
永平寺町 ホームページ
お寺が町の名前になっております。