「『気持ち』をコピーするんだよ!」

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ヒロト (中略)でもさあ、芸事とか、クリエイティブな仕事に就くと、自分の好きなスタイルを模倣しようとするじゃん。

博士 そうだね。まずは、模倣から入る。

ヒロト そこにひとつのコツがあるんだよ。僕はもう発見している。その模倣のレベルのチャンネルを1つ変えるんだ。例えば、ギタリストがギターを持って「あいつの鳴らしたあの音を自分で鳴らしたい」って思っちゃ、もうダメなんだよね。

玉袋 どう思えばいいんですか?

ヒロト 自分の大好きなあいつがあの音を鳴らした時の「気持ち」をコピーするんだよ! そうやっていくと一生現役なんだ。音をコピーしたり再現したりだとすぐに形骸化するだけでさ。ロックを始めたときの衝動、そこに衝動がなければ現役じゃないと思うんだ。もし、その衝動がなくなった時は終わりだな。そうなったら僕も引退するよ。

(「濃厚民族」 P251-P252)


おまえらは誰かを好きになり過ぎるんだよ!」とビートたけしに言わしめられた浅草キッドと15人の「漢(おとこ)」との対談集の一説である。対談相手はTHE HIGH-LOWS(※1)の甲本ヒロト。実はこの二人、岡山の名門中学、岡山大学教育学部付属中学の同級生(※2)でもあるのである。
 上達の入り口は模倣。しかし問題は「何を模倣するか」だ、というメッセージはとても強烈だ。なるほど、確かにそうかもしれない、と思わせえる。
 この名言を発見したのは、確か上りの新幹線の中。出張の帰りだ。とりわけ名言を求めて、なにか救いを求めてこの本を読み始めたわけではない(少なくともそういうタイプの本ではないし、そういうテンションでもなかった)だけに、この「名言」と出会ったときの感動はひとしおであった。
 自分の上達体験を振り返ってみたときに、それが模倣から出発していたなぁと回想する。しかしだからといってそのポイントが「「気持ち」をコピーする」ことにあった、と発見し言語化するなんて、なかなかできないだろう。
 普通、意識的でないところで進行していくものであると思われる上達のステップを、ごくシンプルに言い当てるなんて、さすがアーティストであるよなぁと感じた。もっといえば上達のステップは、ロジカルであるはずなのに、それをまた違うアプローチで感性によって言い当てている。いやぁすばらしい。
 自分は大学時代から社会人になって1年ほど、出身高校の演劇部にて高校生相手に指導していた時期がある。この名言を偶然発見してしまったときも、出張からの帰りのまま新横浜で新幹線を下車し、高校へ指導に直接向かった。(休日だったのだ)
あまりに印象的だったので、その指導の際に、この言葉を高らかと読みあげ、生徒たちに聞かせた。浅草キッドの二人と甲本ヒロトとの対談形式なだけに、ひとり三役を演じながら、さも演劇台本を読み聞かせているようでもあった。しかし、それがちゃんと届いたのかどうかは定かではない。


※1

11月をもって活動休止中とのこと
http://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2005/11/12/01.html
※2
本書によれば、

中学時代に同じ空気を吸っていた甲本ヒロトはラジオから流れてくるビートルズで将来が決まり俺はラジオから流れてくるビートたけしで将来が決まった(P237)

とのことだ。「ビートルズ」と「ビートたけし」。事実をこうもうまく結びつけ再構成するなんて、水道橋博士の才能には舌を巻く。
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■今回の引用元
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(「濃厚民族」 スコラマガジン 浅草キッド)

名言集