自社のPRの一環として趣向を凝らした文化的な施設を持っている企業がいくつか存在します。東京都内ではこのコラムでもトイレを軽く紹介したことのある東京電力の電力館などもその一つです。企業の文化施設ガイドを見るとこの他にも都内だけでも数多くの施設があることに驚かされます。
実は日本の二大便器メーカーもこういった文化施設に力を入れている企業の一つといえます。乃木坂にあるTOTO乃木坂ビルにはインテリアデザインがメインのギャラリー間や建築関係の本をそろえたBookshop TOTOがありますし、INAXのほうも同様に東京・名古屋・大阪にギャラリーを持ち、東京にはこれまた同様にブックギャラリーもあります。(実はどちらの会社も出版業務も行ってるんですね)
しかし、INAXの文化施設で最も力の入ったものは前述のギャラリーではなく、さらに別にあるのです。それは常滑、つまりINAXの本社所在地にあります。常滑の町の一角を「常滑文化エリア」と銘打って2つの資料館・博物館と体験施設、そして全国的にも珍しいトイレの公園「とこなめトイレパーク」が一箇所にまとまっており、まさにINAXの文化活動の中枢といった雰囲気です。
神奈川県在住の筆者としてはまさに近いようで遠い場所だったのですが、つい先日行く機会がありましたので今回はその模様を書いていきたいと思います。
名古屋の中心部から名鉄電車に揺られて40分ほど、電車が常滑に差し掛かるとINAXのロゴも誇らしげな工場群が見えてきます。ここから徐々にINAXの街に訪れたという実感が沸いてきます。常滑駅のホームに降り立つとやや遠方にINAXの本社ビルがあり、屋上の巨大サインボードには、「Progress with Tokoname」という力強いメッセージが確認できます。
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さあ、いざ文化エリアへ!と本社ビルが間近に見えたのでそちらに向かって歩いていったのが間違いでした。地図をよくよく見ると常滑文化エリアは本社ビルとはまったく正反対の方向に位置するのでした。(地図には本社の位置が載っていなかったのです)それに気づいた後も駅には戻らず遠回りのルートを選んだため、30~40分の長い常滑市内散策(帰りは間違えなかったので20分弱で着きました。)をする羽目になってしまいましたが、これはこれで有意義な体験でした。
さて、そんな苦労を経てやってきたは常滑文化エリア!第一印象は「結構奥まったところにあるなあ」といったところでしたが、何はともあれ着いたのです。全体の雰囲気はさすが文化エリアといった印象の手の込んだもの。はやる気持ちとは裏腹にどこから先に見ようかしばらく迷ってしまいました。
まず覗いてみたのが、「とこなめトイレパーク」です。直訳すると「トイレの公園」というその名の通り、完全にトイレのためにある公園という印象です。または公園全体が巨大な公衆トイレという見方も出来るかもしれません。そんな世にも珍しいトイレの公園は地元の方のオアシスになるようにという願いからか、奥まったところにあるほかの施設とは違い、交通量の多い通りに面しています。
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左の画像は入り口からトイレパーク全体を見た図です。後方に見えるオブジェのような建物、それらが全てトイレなのです。手前の左側が女性用、右側がユニバーサルトイレ、そして奥に見えるのが男性用トイレです。入り口にはうさぎ(?)の絵で「おんな」「おとこ」「みんな」となっていました。残念なことに「みんな」は故障中で中に入ることが出来ませんでした。真ん中の画像は水に浮かんでいるような演出が粋な女性用トイレです。見ての通り女性用トイレとしてはかなり開けっぴろげですが、水をまたいで島のようになったトイレにアクセスするというのは気持ちいいでしょうね。右の画像は個室内部です。企業の顔だけあってとても清潔に保たれています。天井部分にかなり隙間があるので閉塞感とは無縁の空間です。様々な色の組み合わせが楽しい外観の世界観をそのまま内部にも持ち込んでいて、使っても楽しい公衆トイレになっています。
ユニバーサルトイレが使えなくなっていたのは残念ですが、総合的に見て公衆トイレとしては非常に高いレベルにあると感じました。設備自体は結構古くなっている印象を受けますが、それでもきちんと整備されており、その点はほとんど気に留める必要はないでしょう。小島のようになったトイレや見ていて楽しくなるような外観など公衆トイレに遊び心を持ち込んでいる点も好感が持てます。
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さて、続いて資料館に行きます。世界のタイル博物館と窯のある広場・資料館は隣接しており、大人500円、高・大学生300円、小・中学生200円でお互いを自由に行き来することが可能です。名前の通り世界のあらゆるタイルが一堂に会す世界のタイル博物館の展示内容はなかなか濃く、じっくり見ることが出来ますが、なんといってもすごいのは窯のある広場・資料館、1921年に建てられた建物は味わいのある佇まいで、内部も当時の状態を可能な限り保存している印象を受けました。(2階部分を歩くと時々みしみしと音がするのです)展示物もこれまたすごく、明治から昭和初期に掛けての絵付きの便器はなかなかのインパクトがあります。エリア全体について、思っていたよりもお客さんが多く少し驚いたのですが、その多くのお客さんはこれらの便器を見てそれぞれ驚きの声を上げていました。
このように「常滑文化エリア」は私の期待を裏切らない充実した内容のものでした。INAXファン、そしてトイレファンの方には是非一度訪れていただきたい場所だと思いますが、実はここにはもう一つトイレファン垂涎の品があるのです。エリアの全体図に関しては今週でほとんど紹介しましたので(体験施設「陶楽工房」には時間の都合で立ち寄れませんでした。)次週はそれをメインに紹介していきたいと思います。
それではまた次週
<今回紹介したトイレ>
常滑トイレパーク
<関連リンク>
INAX 文化活動ページ
「企業は、経済機関であるとともに文化機関である」という力強いお言葉があったり、専用のサイトを設けたりと文化活動に対する力の入れ方はTOTOを上回るものがあるかもしれません。こちらで「常滑文化エリア」のアクセスマップなども見られます。