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2005年10月12日

愛すべきレトロ空間(1)

長く使われているトイレを見るのは面白いものです。建てられた時期によって採用されている便器やタイルなどの色やデザインが徐々に違ってくるのです。それによって大体どの位の年代に作られたトイレかが分かってきます。その中でも特に今の傾向と違うデザインのトイレ、言ってみればややレトロな雰囲気のトイレを見ると「よくここまで・・・」とうれしくなります。


今回は2週にわたって最近見られなくなったトイレの設備についていくつか書いていこうと思います。まず第一週目は便器や洗面器などの「衛生陶器」についてです。


和式便器のデザインに関しては長い間あまり変化がありません。ここ数十年での大きな変化としては「金隠し」の形状が丸いものから直線的なものに変わった程度です。おそらくこの変化は80年代中ごろ~終わりごろに起こったと思われます。そのため、まだそれほど古くないように見える建物でも丸い形状の和式便器が置いてあると、意外と出来てから年月が経っていることが分かり、興味深いです。



対して洋式便器はいくつか面白い形状のものが存在します。特に今非常に貴重なのは30年以上前の形の土台部分が角ばった形状をした便器です。この便器が生産されていた当時はまだ公共の場所に洋式トイレは珍しかったのか、便器のほうは早々と取り替えられてしまったのか不明ですがなかなか見つけにくい便器となっています。また、現存しているのは歴史のある百貨店や劇場などいかにも管理の行き届いていそうな場所ばかりです。これらの場所では内装も豪華なので角ばった形状の便器と相まって独自の風格をかもし出しています。ちなみに左の画像は東洋陶器のもので、右は伊奈製陶のものです。右の便器のロゴマークがinaであることから少なくとも1969年の時点では洋式便器はこういった独特な形状をしていたということですね。(伊奈製陶のマークの変遷についてはこちらを



また、それほど古くはないのですが、すっかり見かけなくなったのがこのタイプの便器です。タンク部分がふくよかな形状をしていることにお気づきでしょうか。これは初期のサイホン式・サイホンゼット式の便器で見られる形状です。サイホン式で16リットル、サイホンゼット式で20リットルもの水を使うあたりが初期型なわけです。タンクが大きいのもそのため?というのは考えすぎでしょうか。この後継機種としてタンクが直線的なデザインになった機種が登場しましたが、これらの機種には初期型と比較して節水という意味で「節水タイプ」という青と白のステッカーが同梱されていました。今や普及型の洗い落とし式を超える地位を確立しているサイホン式ですが、この当時はまだ認知されていなかったのかあまり現存している数は多くないように思います。形はなかなかグラマラスで、独特の魅力のある形だと思います。



そして最近まで生産していたことからレトロといえるかは微妙なところですが、小便器の形状として今だに強いイメージのある朝顔形小便器です。小学校4年か5年ごろの図工の教科書に朝顔型便器を「泉」に見立てた芸術作品が掲載されていて「なるほど」と思ったものですが、それほどこの形は人間に何らかのインスピレーションをもたらす形なのかもしれませんね。受ける面積が狭く、しかもうまくモノが隠れない形状であることから今となっては使いやすいとはいえないのかもしれませんが、どことなく憎めないものがある形でもある気がします。


と、このように今回はトイレにおけるレトロな便器をいくつか紹介してきました。これを見ると便器も他の工業製品と同じように古ければ古いなりの「味わい」があることがわかります。角ばった便器には歴史の重みを感じますし、丸みを帯びた便器には今の便器にはない温かみがあるような気がします。実現する可能性は高くないと思われますが、これらの便器が最近のデザインの建物に取り付けられたところをちょっと見てみたいですね。意外とよくマッチするかもしれません。



最後に余談ではありますが、ちょっとしたお話を。左の写真は朝顔が多少便器でよく見られる、下水に通じる管の入り口についているふたです。そして右の写真は東武鉄道の車両についているロゴマーク。似ていませんか?東武鉄道のマークは俗に「女性のアレの落書き」に似ていると言われていますが、私が思い浮かべるのはやはりこちらの方。その辺はやはり、衛生陶器愛好家ですから。


それではまた次週。


<今回紹介したトイレ>
電力館(丸みを帯びた和式便器)
渋谷駅より徒歩7-8分
このタイプの便器を見て「意外とこの建物古いんだ」と実感した建物の一つです。


国立劇場(角ばった洋式便器:東洋陶器製)
東京メトロ半蔵門線半蔵門駅下車徒歩5分
今はウォシュレットが取り付けられている記憶があります。


鳥羽パールビルそばの建物(角ばった洋式便器:伊奈製陶製)
三重県鳥羽市
建物全体の雰囲気がレトロというか寂れた雰囲気で素晴らしいです。


天下一品歌舞伎町店(グラマラスな洋式便器)
意外なところにありました。


南海汐見橋線木津川駅(朝顔型小便器)
噂どおり関西には朝顔が多いような気がしました。


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