愛すべきレトロ空間(3)

さて、3週にわたってお送りしてきた愛すべきレトロ空間も今週が最終回です。前の二回分では主に便器について書いてきましたが、今回はタイルの色、形などインテリアの面からトイレで見られるレトロを探してみようと思います。
便器の場合は割合長く同じ形の製品が作られることが多いことと、便器としての機能は一緒なので形も必然的に似てきますが、タイルとなると単なる床や壁の材質というだけでなくトイレ内の装飾としての機能も持つためその形態は様々です。中には時代が巡り巡って現在でも通じるようなデザインのものも見受けられます。今回はそんな特徴的なレトロなタイルをいくつか紹介していきます。



「レトロなタイル」について考えてみたときまず最初に思い浮かんだのは写真のような「玉砂利風」のタイルです。公衆トイレではあまり見かけませんが民家やお寺のトイレまたは銭湯などでも使われています。この玉砂利の色も写真のように黒と白のオーソドックスなものから茶色や肌色が混ざったややカラフルなものや玉砂利の形がまん丸のものなど様々なバリエーションが見られます。遠目で見ると色が混ざっている感じがなかなかきれいですが近づいて見てみるとそれぞれ形が違う、大小白黒入り混じったタイル群が結構毒々しく写ります。玉砂利が敷き詰められた小道をイメージしていると思われますが、そういった風流さはあまり感じられません。個人的に筆者はあまり好きになれないタイルです。

そしてもう一つ思い浮かぶのが写真のようなタイル。最近のトイレのタイルはつやがなく、一つ一つが大きいものが多いですが、こちらはその逆の一つ一つが小さく、光沢があるタイルです。写真はありませんが、このタイプの仲間で縦に長いものも時々見かけます。また、様々な色のタイルが作られたようで、銭湯やトイレなどでバラエティ豊かな色のこのタイプのタイルを見ることが出来ます。そのためカラーコーディネーションにはセンスが如実に表れます。左の写真のようにアイボリーカラー一色で無難に清潔感を出すもよし、右の写真のように青の濃淡を組み合わせてひそかなおしゃれを演出するもよし。強烈なところではくすんだブルー(便器にも「迷う喜び」をで取り上げた「ファンシーブルー」に近い色です)に白の市松模様が床全体に繰り広げられているというのを見た覚えがあります(今見たら意外にかっこいいかもしれません)。そう、色を組み合わせると言う点では最近見られるモザイクタイルと同じ発想なのです。右の写真のブルーのアクセントは現代でも通じるようなさわやかな印象を持っていますし、私の実家の近所に数年前まであった銭湯の壁画はモザイクタイルで描かれていました。どうやら30-40年ほど前のトレンドが時代の流れと共に再び「今風」になったのかもしれません。

そして最後に紹介するのが上の写真のような丸いタイルのトイレです。こちらも光沢のある質感です。トイレ内の設備から想像するには大体80年代初めから中ごろの間に掛けてのトイレに多いと思われます。質感も同じようで違うのは形だけなのにこのタイルでは四角いタイルのように色を組み合わせるということはなぜかあまりありません。また、写真のトイレではベージュですが、このタイルでは濃い色のものをよく見かけます。濃いブルーやワインレッド、ライトブルーなどです。この濃い色+丸いタイルとの組み合わせは不思議なほどギラギラとした濃厚な雰囲気をかもし出します。そこがまた先週書いたような「私が想像する80年代」の雰囲気と重なるものがあり、なんとなく好きなタイルです。
今日はレトロなタイルをいくつか紹介してきました。ファッションの流行には周期があり、巡り巡って何年も前のトレンドが再び脚光を浴びる・・・。と言うことを時々耳にしますが、トイレのインテリアの世界にもどうやら同じことが言えるのかも、とモザイクタイルの例を見て思いました。すると次の何年かであのギラギラの丸いタイルも流行るんだろうか、そして「玉砂利風」タイルは?と考えていくとなかなか面白いものがあります。世の中のトイレ全てがそうなるとちょっと目障りかも知れませんが、時々こういうトイレがあると日常が楽しくなるような気がするのは私だけでしょうか?
それではまた次週
<今回紹介したトイレ>
京都 建仁寺
「玉砂利風」タイルと、青のアクセントが美しい小便器
格調高いお寺でした。こういうところで見ると「玉砂利風」タイルも風格が出てくるような気さえします。
松屋銀座 7F 職員用トイレ
アイボリーの角タイルのトイレ
高知 追手筋沿いの公衆トイレ
丸タイルのトイレ
内部の壁がベージュの丸タイルで埋め尽くされています。他にも高知城内の汲み取り式トイレなど高知市内は興味深いトイレが多いようです。

衛生陶器愛好家の、トイレ巡礼