先週まで二週にわたってその地ならではの特徴的な公衆トイレを紹介してきました。立地条件などの制約から生まれた独特な公衆トイレは見ていてなかなか興味深いものですが、反対に「どこへ行っても同じ使い勝手」を実現するべくいわゆるユニット式の公衆トイレも最近増えてきています。壁やタイルなどのトイレの構成要素を出来るだけ一まとめにして組み立てるという方式で、普通の公衆トイレが従来型の浴室だとするとこちらはユニットバスルームといったところでしょうか。
ほとんどの仕様はすでに決まっているため地域ごとの特色が出しにくいのは欠点ですが、シンプルで清潔感のある外観と機能性最重視といった趣の内装からは奇をてらわない、あくまで清潔感を第一にという思想が感じられ、ある意味で公衆トイレのあるべき一つの姿と言えるかもしれません。
そんなユニット式の公衆トイレにも様々なバリエーションがあります。例えばINAXではアーバントイレと銘打って便器の種類や数に応じて数種類のバリエーションを持ち、なおかつ外観デザインも和風と洋風から選べるなど大手メーカーならではのバリエーションとデザイン性が特徴です。そして、今週話題の中心にするのはメーカーは不明ですが、インパクトの強い飛び道具的な設備を有するユニット公衆トイレです。
そのトイレは最近では公園などによく設置されている気がします。今回掲載する写真は通りがかりの普通の公園ですが、横浜の山下公園でもこれとほぼ同型のものを見ることがあります。
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外観は白を基調にオーソドックスにまとめられており、内部はステンレス製便器が「ユニット」らしさをかもし出しています。個人的にステンレス製便器は冷たい印象を受ける点と無骨なデザインからあまり好きではないのですが、出来てから日も浅いようで清潔に保たれているせいか逆にその冷たさが全体のシンプルさとマッチしているようにも見えてきます。しかしステンレス製便器は腐食が進むとかなり不潔な印象になるので今後もこの清潔感を維持できるかはまだ未知数ですね。
そしてこのトイレの最大のハイライトはトイレのちょうど中央に設けられた「マルチトイレ」です。いわゆるバリアフリー式トイレで、入り口のドアは8月31日の回で取り上げた形式のドアを採用しています。その際は内部にはあまり触れませんでしたので今回は内部をゆっくり取り上げてみたいと思います。入り口の扉にだけ目が向きがちですが、内部も負けず劣らず合理的に出来ているのです。
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「必要なものを手の届く範囲に」という思想が感じられるレイアウトです。荷物置きやベビーシート、手すり、紙など便器に座ったときに手を伸ばすものほぼ全てが手の届く範囲に配置されています。広いけど無駄に広くない、とても機能的なトイレだと思います。そしてもう一つ面白いのは手洗い器です。水が下から、しかも手前から出てくるのです。小さいので使い勝手は「まあまあ」と言ったところですが、それほど水量が多くなかった割には心なしか上から出てくるタイプよりも良く洗えた気がします。
一番右の画像はこのトイレのドアに指令を与える開閉スイッチです。上が「閉」ボタンで下が「開」ボタンなので機能自体は一般的な横引き戸のバリアフリートイレで見られる赤と緑のボタンと同じなのですが、こちらは金属製で未来的な印象です。このボタンはトイレの利用者がまず最初に触れるものであるため、使う人にもひそかに先進性をアピールする心を忘れていない辺りは心憎いところです。
扉の構造上の問題なのか個室と扉の間には写真のようにわずかに隙間が空きます。また、扉と床の間にも同様に隙間があるため、横引き戸式のバリアフリートイレにあるような「扉を閉めたらそこはしばしの間私だけの世界」と言った雰囲気は薄いです。また鍵を閉めないままトイレ内に滞在していると15-20分ほど(正式な時間は失念しました)で自動的に扉が開いてしまうので注意が必要です。ちなみに鍵はボタンの下に映っているレバーのような物体を一回転させてドアの金具に引っ掛けます。これに関しては意外とアナログを貫いているようです。
今回は合理的な構造を追及したユニット公衆トイレを紹介しました。実際に使ってみても使いやすいですし、マルチトイレはドアといい内部といいなかなか面白いものがあると思います。公衆トイレなどの多くの人が利用するトイレとしては「地味でも誰でも普通に使えてなおかつ清潔」というこのトイレは目指すべき一つの方向性なのではないかと考えてみた次第です。
それではまた次週
<今回紹介したトイレ>
稲城市大丸公園
川崎街道沿い 私立稲城病院そば
その他のユニットトイレ情報
横浜山下公園にほぼ同型のものが設置されています。こちらの場合はボタンがもう一つあり、そのボタンは便座を出すためのボタン。使用後、便座は格納されおそらく洗浄・消毒されて出てくるものと思われます。ある意味で今回紹介したトイレよりも進んでいますが、これとほぼ同じ機能を持つ東武伊勢崎線北千住駅のトイレ(マルチトイレ以外はユニットではありません)ではその機能が使われず、便器が出たままになっていたので現在でも使われているかは分かりません。