公衆トイレにはそれぞれの自治体の特徴や考え方が反映されていることが多いです。例えば川崎市の公衆トイレは深夜になると自動的に床に3回ほど放水します。これはもちろん清掃のためですが、同時にトイレに人が住み着かないようにするための配慮という意味もあるそうです。また、地方では町おこしの一環として総工費1億円などといった非常に豪華なトイレを見ることも出来ます。
と、このように公衆トイレの作りや雰囲気も街の雰囲気と同じくらいその街の特徴などを私達に語りかけるものだと思うのです。今回は日本の首都、東京で見られる特徴的な公衆トイレを二週にわたって紹介していきます。
今週は大田区で数多く見られるトイレの紹介です。面積は23区最大、人口も世田谷区・練馬区に次いで第三位となかなか大規模なこの区では他の区ではあまり見かけない姿のトイレを見ることが出来ます。
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これがそのトイレです。ご覧の通り非常にコンパクトです。サイズで言うと工事現場などで見られる仮設トイレより一回り大きい程度でしょうか、これが大田区の特に公園などに多く設置されています。モノレールの駅から近い昭和島運動場では広大な平地が広がっているためあちらこちらにこの円筒形の物体がニョキニョキと立っている風景が見渡せます。
大田区以外でも見た記憶があるのですが、見る頻度は圧倒的に大田区が多いためここでは仮に「大田区型トイレ」として、大田区型トイレを大田区型トイレたらしめている条件を整理すると、
1)円筒形であること
2)ドアは外開き
3)内部は段差付きの和式
4)あくまで「一人のための」スペース
となります。実はこの条件を守っているトイレの中でも細部のデザインなどで様々なバリエーションが存在します。写真のトイレはその中でも希少なタイルなしのタイプですが、これらの多くは内外タイル張りになっているものが多く、そのタイルの中にも目地の細かいものから大きいものまで様々です。おそらく建てられた年代の違いだと思うのですが、そういったバリエーションを見つけてみるのも面白いです。
個人的にはこのトイレの外観はいいと思います。同じコンパクトなトイレでもプレハブのような四角いものと比べてスマートな印象を受けますし、特にタイル張りのトイレについては見た目に清潔感を感じます。また、独特な字体の”Toilet”も見慣れるとこのトイレのデザインにマッチしているような気がしてくるから不思議です。
そして肝心な居心地は、というと内部に比較的明るめな色調を採用し、なおかつ天井には明かり取りの窓があるため室内が明るく、公衆トイレの中ではにおいも気にならず清潔な部類に入るので決して悪くありません。ただ、全方位を壁に囲まれている格好になるためやや圧迫感があります、そのため狭いところが苦手な方には向かないかもしれません。
と、このように大田区にこのトイレありといった感じのこの「大田区型トイレ」ですが、設備はそろそろ見直す時期が来ているかも知れません。「バリアフリー」という言葉があらゆる場面で盛んに叫ばれるようになった昨今、狭くしかも和式だけの公衆トイレはバリアフリーの流れに反しているとも考えられるからです。狭く、壁に囲まれるような格好であるがゆえに「自分だけの空間」を演出できる魅力がありますし、小さくちょっと洒落た見た目には親近感を感じますが、そうも言っていられなくなってきたのかも知れません。
最近、前々回のコラムで取り上げたタイプのドアを採用したバリアフリー公衆トイレを見かけることが多くなってきましたが(2週後あたりに取り上げてみましょうか)、これはコンパクトかつ先進的でなおかつ十分なスペースを持っていることから次世代の大田区型トイレのあるべき姿に近いものがあるかもしれません。これをベースに今までの大田区型トイレのテイストを盛り込んだ新しいトイレにいつかお目にかかってみたいものです。
さて、来週取り上げるのもコンパクトなトイレですが、「切実さ」という意味で今週の大田区型トイレを大きく上回る、いわば苦肉の策的なトイレを紹介します。
それではまた。
<今回紹介したトイレ>
弁天橋公衆便所
大師橋の東京側のそばにあります。電車などでは不便なので、電車の場合はモノレール昭和島駅そばの昭和島運動場で多く見ることが出来ます。また、それ以外でも大田区の駅周辺の公園などを重点的に回れば見つけることができると思います。