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ドラマ「タイガー&ドラゴン」で使われた噺は誰のものを聴けばいいのか?
後半(猫の皿・出来心・粗忽長屋・品川心中・子は鎹)。
(ちなみに前半は、三枚起請・芝浜・饅頭怖い・茶の湯・権助提灯・厩火事・明烏)
今回も京須偕充の本を基本にする。
●猫の皿(5/27)
京須偕充の3冊の本に「猫の皿」は載ってなかった。
CD『名人で聴くはじめての古典落語』シリーズ(※1)(全10タイトル ドラマ『タイガー&ドラゴン』で演じられた古典落語の演目を本物の名人で聴く、お求め易いシングルCD)には、古今亭志ん生の「猫の皿」が入っている。(※2)
「猫の皿」については、「浅草へ行く②(「猫の皿」編)」に少し書いてある。
そのときは、柳家小三治のものを聴いた。
●出来心(6/3)
京須偕充は『ガイド落語名作100選』でこの2人をとりあげている。(※3)
・八代目春風亭柳枝
・柳家小三治
●粗忽長屋(6/10)
京須偕充が『古典落語CDの名盤』でとりあげているのは、ひとり。(※4)
・五代目柳家小さん
古今亭志ん生(※5)、立川談志(※6)のものも面白そう。
●品川心中(6/17)
京須偕充が『古典落語CDの名盤』でとりあげたのはこの4人。(※7)
・五代目古今亭志ん生
・三代目古今亭志ん朝
・六代目三遊亭圓生
・立川談志
志ん朝の兄、金原亭馬生(※8)のも良さそうである。
●子は鎹(6/24)
京須偕充の『ガイド落語名作100選』の「子別れ」の項でとりあげられたのは、この5人。(※9)
・五代目古今亭志ん生(※10)
・八代目三笑亭可楽
・六代目三遊亭圓生
・柳家小三治
・柳家小さん
「子は鎹」は「子別れ」の「下」にあたるのだが、この5人があげられた理由は「子は鎹」じゃないところにある。
九代目林家正蔵の「子別れ」もいいらしい。(※11)
参考になったでしょうか?
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(※1)
CD『名人で聴くはじめての古典落語』シリーズのラインナップ
芝浜/桂三木助(三代目)
饅頭こわい/古今亭志ん生(五代目)
茶の湯/三遊亭金馬(三代目)
権助提灯/三遊亭円遊(四代目)
厩火事/古今亭志ん生(五代目)
明烏/桂文楽(八代目)
猫の皿/古今亭志ん生(五代目)
粗忽長屋/古今亭志ん生(五代目)
品川心中/三笑亭可楽(八代目)
子別れ/三笑亭可楽(八代目)
(※2)
矢野誠一も、志ん生の「猫の皿」が楽しかった、と言っている。
このはなし、古今亭志ん生のものが楽しかった。だいたい志ん生という落語家の口をとおすと、犬だの猫だの、蛙だの魚や虫にいたるまでの動物が、なんとも不思議な躍動感をもって迫ってくるのが常であった。『猫の皿』でも、果師に茶店の前を流れる川の、めだかや蛙に目をそそがせていたものだ。
(矢野誠一『落語讀本』文春文庫1989年)
(※3)
八代目春風亭柳枝(一九〇五~五九)が花色木綿までの件を『花色木綿』と題してやり、八五郎と家主の盗品調べのやりとりがワンパターンながらリズミカルでおもしろかった。
そこをワンパターンでなくやるのは柳家小さん、柳家小三治の『出来心』だ。八五郎が花色木綿と言うたびに家主が見せる一々の反応が変化に富んでいるから、それを味わうのもまた楽しい。
(京須偕充『ガイド落語名作100選』弘文出版1999年)
ちなみに、花色とはこんな色である。
ところで、「裏は花色木綿」という、その「花色」だが、花色だから単純に桜色だろうぐらいに、子供の頃は考えていた。花色は「縹色」のことで、「はなだいろ」と読む、薄い藍色と知ったのは、字引をひくことを覚えてからだから、これも少しあとのことになる。
(矢野誠一『落語讀本』文春文庫1989年)
(※4)
“ここはどこ、わたしはだれ?”風の意識のゆらぎは誰にでもあるが、それを徹底したかたちで二人の人物に託した噺だろうか。そう思えば、本人が本人と認めてその本人を引き取るのは正常なのかもしれない――と思わせるほど自然に演じて、不思議な世界へ誘ってくれた五代目柳家小さんが唯一最高の高座だった。
抱かれているおれはおれだが、抱いているおれは誰だろう、は、普通の意識へと覚めかかったような一瞬をすくい上げて結末をつけた、サゲの逸品。荒唐無稽に流れ過ぎずに、普通人の意識との接点で笑わせて終わるのである。【これぞ名盤CD】
■五代目柳家小さん「CD-BOOK五代目柳家小さん落語全集」20枚組 小学館
(京須偕充『古典落語CDの名盤』光文社新書2005年)
『笑芸人』(2003春号)の「古今東西ベスト百席ランキング」に「粗忽長屋」で入ったのは、柳家小さんで、第22位である。
(※5)
『笑芸人』(2003春号)「古今東西ベスト百席ランキング」のアンケートで、風間杜夫は、志ん生の「粗忽長屋」を第1位にした。
「1位 粗忽長屋/古今亭志ん生」
志ん生は、何と言ってもその絶妙な語り口に感嘆する。僕もいつの間にか、志ん生の世界に身も心も投げ出している落語ファンの一人なのである。
まくらもいいらしい。
「粗忽長屋」を志ん生師匠もおやりになったんですが、本題はやっぱり、小さん師匠のものが素敵なんです。ただ、まくらで、粗忽者の例を出す時に、半鐘の中に頭を突っ込んで「真っ暗で何も見えねぇ」というのがあるでしょう。小さん師匠では普通のまくらに聞こえるんですが、志ん生師匠のを聞くと、「いそうだぁ、こいつ……」と思うんです(笑)。たまらないんですよ。ほんとに、頭突っ込んでしゃべってそうなんですよ。
(春風亭小朝「志ん朝師匠、実は……」『東京人』2003/12号)
(※6)
*談志イリュージョン落語のおすすめ
『風呂敷』『やかん』『洒落小町』『堀の内』『松引き』『粗忽長屋』『二人旅』
(立川志らく「談志論」高田文夫編『江戸前で笑いたい』中公文庫2001年)
また、なぎら健壱は、「古今東西ベスト百席ランキング」のアンケートで、談志の「粗忽長屋」を第2位にしている。
また談志師の「粗忽長屋」は、『花王名人劇場』で円楽師と競演をしたときにしか聞いておりませんが、円楽師を意識したのか(円楽師の出し物は「藪入り」)見事の一言に尽きました。
(※7)
五代目古今亭志ん生、三代目古今亭志ん朝、六代目三遊亭圓生、立川談志など名演名盤に事欠かない。舞台は吉原ではなく、江戸の中心から一里離れた東海道の宿場・リゾートの品川だが、江戸の廓噺の代表作といえよう。圓生と談志は後半まで口演している。
【これぞ名盤CD】
■五代目古今亭志ん生「古今亭志ん生傑作選Ⅵ」ポニーキャニオン
■三代目古今亭志ん朝「志ん朝復活 色は匂へと散りぬるを~り」ソニー・ミュージック
■六代目三遊亭圓生「圓生百席23」2枚組 ソニー・ミュージック
■立川談志「立川談志ひとり会―第五期―」コロムビア
(京須偕充『古典落語CDの名盤』光文社新書2005年)
(※8)
「これが十八番! おすすめCDガイド」
金原亭馬生
矢野誠一・選
明烏/辰巳の辻占い/今戸の狐
水屋の富/つづら(つづらの間男)編集部・選
たがや/品川心中/抜け雀
おせつ徳三郎/お初徳兵衛(矢野誠一「古今亭の遺伝子」『東京人』2003/12号)
(※9)
吉原までが「上」、離婚と再婚の失敗が「中」、三年目の復縁が「下」である。「上」は『強飯の女郎買い』という題で、以前は独立してやられることが多かった。『屑屋の遊び』とした例もある。「下」は『子は鎹』とも呼ばれる。ふつうはここが『子別れ』のエッセンスのように扱われ、人情噺的性格をもつ落語名作の大ネタとして重んじられている。「中」は地味だから、ここだけを切り離して演じる例は稀だ。しかし、実力者の手にかかるとききごたえはある。
上中下の性格はそれぞれちがう。とくに上と下は水と油のようで、もともと別々の噺が接合したように思われる。通して上演した人は、戦後では五代目古今亭志ん生(一八九〇~一九七三)、八代目三笑亭可楽(一八九八~一九六四)、六代目三遊亭圓生(一九〇〇~七九)、柳家小三治くらいのものだろう。むずかしい「中」を比較的好んでやったのは、志ん生、圓生、柳家小さん、小三治である。
(京須偕充『ガイド落語名作100選』弘文出版1999年)
(※10)
やっぱり志ん生がいいのだ。
高田 志ん生さんはどんどんカットしちゃうから短いですよ。人が三十分かかるものなら十五分でやっちゃう。それでちゃんと笑いを取ってますもの。
鴨下 結局、噺のスタイルだけ借りて違うことやっていたんですよ。
高田 ただ自分を表現していた。志ん生という生き様を見せ続けたわけです。
鴨下 人間のケチなところとか、やばいところだけをバサッと出しちゃうから短くて済むんです。でも一方で、志ん生さんは泣けるんですよ。『子別れ』とか泣けるんです。
高田 上中下とたっぷり演ったやつがありますよね。なんだか知らないけどやっちゃった。イケーでやっちゃう(笑)。
鴨下 止まらなくなっちゃう(笑)。特に前半部分がいいんですね。女郎買いにいって背中叩かれて折詰がこわれて中の汁が出てなんて、筋と関係ないところがいい。なんかチャランポランなこといってる間に、自然と人間が描けてくる。構成とかストーリーに頼らないところがあったんじゃないですか。
高田 作品に寄りかからなかった。
鴨下 志ん生師匠の噺で何が一番好きですか。
高田 ぼくは『黄金餅』なんかが好きですね。あのドロッとした世界が……。
鴨下 よく『富久』がいいなんて言われますよね。世評は高いんですが、ぼくはもっといいのがあると思うんですよ。
高田 『子別れ』がいいんですね。後添えの女が嫌な女でね、それがまた余計にいいんですよ。
鴨下 文楽とか円生は嫌な人間というのは十分に描けなかったんじゃないでしょうか。お二人ともご当人が二枚目ですから。今の落語家は概して嫌な人が上手くないですね。志ん生さんは嫌な奴もちゃんと出てきた。『お見立て』にしても『品川心中』にしても、嫌な部分が必ずないとだめな噺でしょう。『品川心中』なんて名作だと言われている割に誰も噺せないんですね。春風亭柳枝さんをどうして好きかというと、あの人を認めたのはお亡くなりになる前に演じた『藁人形』だったんですよ。あれは嫌な噺なんですが、これがものすごくよかった。ああ、あの人はとんでもなく上手いんだと思った。たけしさんは時々映画なんかで、嫌な人を演じるでしょう。
高田 それをやってくれてこそ芸人さんですよね。『子別れ』だって主人公のカミさんは必ずしもいい人間ではないですもの。あれは、どっちもどっちの話で、そういうところが出るのがいいんですが、みんなあの噺で子育てを美談にしちゃう。でも落語ってそんなものじゃないですよ。
鴨下 今は人間喜劇にしないんです。今の落語家はそのあたりを考えてほしいですね。ぼくはもっと悪人を描いたら受けると思うんですね。
(鴨下信一・高田文夫「志ん生と江戸の笑い」高田文夫編『江戸前で笑いたい』中公文庫2001年)
「品川心中」についても語っているので、ちょっと長く引用しました。
(※11)
こぶ平(当時)の「子別れ」は「2004年ホリイの聞いた落語のベスト15」の第6位に入っている。2004年10月10日、松戸市市民会館での爆笑夢の落語会。
(堀井憲一郎「ホリイのずんずん調査」『週刊文春』2004/12/30・2005/1/6号)
【この落語家の噺を聴け~!】