浅草へ行く②(「猫の皿」編)


前回のツヅキ。
飯田屋で昼御飯を食べたところまでが、前回。
5月3日の夕方から始まります。
今回は「タイガー&ドラゴン」でおなじみの浅草演芸ホールが登場します。
夕方、小林信彦が「つまらない建物になった」という神谷バーへ行った。
小林信彦・荒木経惟『私説東京繁昌記』ちくま文庫2002年
一階のバーは満席だったので、二階のレストランに入った。
まず、生ビールをチェイサーにして、デンキブランを一杯。
その後、デンキブランを立て続けに2杯。計3杯。
デンキブランは3杯目からが美味しい、と私は思う。
薬草が入っているからか、ドクターペッパー的な味わいがあって、だいたい3杯目くらい飲むとその味に慣れるのである、私の場合。


しかし、デンキブラン3杯で神谷バーを出た。
浅草演芸ホールのG・W特別興行を観に行くためである(途中からだけど)。
私が観たのは、
・三遊亭金馬「幇間腹」(※1)
・昭和のいる・こいる 漫才
・三遊亭歌之介「坂本龍馬伝」っていうのかな
・柳貴家小雪 太神楽曲芸
・柳家小三治「猫の皿」(※2)
である。
目的は2つ。
昭和のいる・こいる、小三治である。
私が、昭和のいる・こいるの名前を知ったのは、CD『お色気大賞特選集15』 (※3)のなかにある「おいそらの、のいるこいる方式」を聴いたからだと思う。
ここに出てくる「のいるこいる方式」というのは、セックスの仕方であって、のいる・こいるのように早口でしゃべりながらいたす、というものである。
つまり、早口がのいる・こいる(こいる)の最大の特徴なのである。
(誤解があるといけないので断っておきますが、のいる・こいるはセックス的ではありません。セックスに利用されただけです)
その後もラジオで聴いたりして面白いと思っていた。
実物を見たのは今回がはじめてだったが、やはり、面白かった。
そうそう、よかった、よかった、よかった、よかった。
小三治は、『週刊文春』(2004/12/30・2005/1/6号)の堀井憲一郎「ホリイのずんずん調査」の「東都落語家2004ランキング」で第2位だったので、是非観ておいた方が良いと思ったのだ。

数えたら、この一年で寄席とホール落語に行った回数が110回ほど、聞いた落語の数は600くらいだった。

これだけ、落語を聴いている人のランキングだから、信用できるのではないか。
それに、

 ホリイランキングでは、寄席にあまり行ったことのないお兄ちゃんお姉ちゃんでも楽しめる落語家を選んだ。(略)
 もう一つ言うと、”古今亭志ん朝をナマで見たことがない人たちのためのランキング”でもある。

というのが、丁度良い。
私はあまり寄席に行ったことがないし、志ん朝が亡くなって小林信彦がショックを受けていたのをみて落語に興味を持ちはじめたのだ。
そのベスト5をみてみる。(※4)
1 立川談志
2 柳家小三治
3 春風亭小朝
4 立川志の輔
5 柳家権太楼

 この上位5人は、誰が何と言おうと間違いないです。2004年のこの5人の落語を10席以上聞いた人なら、絶対、この順位をつけるとおもう。

堀井憲一郎は談志と小三治を比較する。

 談志と小三治は世代が違う。年は近いが、もともと違う落語家世代に入れられていて、それはいまでも違ったままだ。談志が先を行ってる。あの年で先ってのは、死ぬのが先ってことだ。談志は自分がまもなく死ぬとリアルに思ってる。小三治はまだ考えてない。少なくとも談志レベルでは考えてないとおもう。「もうすぐ死ぬかもしれない」とおもってる談志落語と「まだ若い」とおもってる小三治落語では、はじけたときの迫力が違いますね。

でも、談志は寄席に出ないので、「もっとも寄席に客を呼べる大看板は、小三治」になる。
だから、この機会に小三治を聴いておきたかったのだ。
噺は「猫の皿」だった。
5月27日の「タイガー&ドラゴン」で「猫の皿」をやったので、あらすじを知っている人も多いかも知れないが、記す。
果師(「なんでも鑑定団の先祖の人」と小三治は言ってた)が、茶店で休んでいると、三百両もする絵高麗の梅鉢が猫の餌用の皿として使われているのを発見する。
そこで、考えた果師は猫を三両で譲ってもう。

「ところで猫は食いつけた容器(もの)でないと食わないてェから、この皿もらってくよ」「その皿はかんべんしてください。絵高麗の梅鉢で三百両もするんですから」「へぇ、そうかい。けど、なんでまたそんな高え皿で猫に飯を食わせたりするんだ」「これでおまんまを食べさせますとね、ときどき猫が三両で売れますんで」
矢野誠一『落語読本』文春文庫1989年

ところが、立川志の輔 選・監修 PHP研究所 編『古典落語100席』(PHP文庫1997年)には、こうあった。

「この皿は高麗の梅鉢という高価な品。家において盗られるといけませんので」
(「こうするとときどき猫が三両で売れます」という演出もある)

で、「解説」に、

この噺ではじいさんも果師も、皿の本当の価値を知っている。だからサゲとしては「猫が売れる」のほうがすぐれている。

とある。
どっちが主流なのだろうか。
小三治のは「猫が売れる」だった。
滝田ゆう『滝田ゆう落語劇場(全)』(ちくま文庫1988年)でも

ときどき猫が三両で売れるんでございます

こっちのサゲが使われている。
「タイガー&ドラゴン」のサゲは、「ヴィンテージ・ジーンズを賞品にすると、ときどき面白い素人が釣れるんでございます」っていう感じだったかなア。
まア、どっちでもいいのかア。
多分、「猫が売れます」だろうね。
『落語100席』も「すぐれている」ッて言ってるし。
今回は「タイガー&ドラゴン」について書いたから、アクセスが増えたりして。
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(※1)文楽が志ん生に稽古をつけてもらったのだが、「どうしてもものにならず『よしましょう、このはなしは私にはできない』と匙を投げてしまった」という噺らしい。
「幇間を描かして一品だった桂文楽」、なのに。
矢野誠一『落語読本』文春文庫1989年
(※2)夜の部主任は小三治だった。
昼の部主任は林家木久蔵だった。
『週刊文春』(2004/12/16号)の「家の履歴書」で談志はこう言っている。

協会じゃそんな勉強しなくても、時間さえたてば誰でも昇進できる。こん平や木久蔵なんて、演れるようなネタは一席か二席でしょ。

でもGWだから有名な木久蔵がいいのかな。
(ちなみにホリイランキングでは第48位)
(※3)「お色気大賞」というのは、TBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」で大人気の「リスナーからお便りで寄せられた、ちょっぴりエッチで笑える体験談を、大沢悠里が物真似と声色を駆使して紹介」するコーナーである。
(※4)ランキングの全体は以下の通り。
1 立川談志
2 柳家小三治
3 春風亭小朝
4 立川志の輔
5 柳家権太楼
6 春風亭昇太
7 柳家さん喬
8 立川談春
9 柳家喬太郎
10 立川志らく
11 柳亭市馬
12 林家こぶ平
13 柳家花緑
14 林家たい平
15 三遊亭円楽
16 春風亭正朝
17 桂歌丸
18 三遊亭歌武蔵
19 金原亭馬生
20 古今亭志ん輔
21 柳家三太楼
22 柳家喜多八
23 入船亭扇辰
24 三遊亭白鳥
25 昔昔亭桃太郎
26 入船亭扇橋
27 入船亭扇遊
28 春風亭鯉昇
29 五街道雲助
30 三遊亭歌之介
31 三遊亭楽太郎
32 三遊亭小遊三
33 三遊亭鳳楽
34 春風亭小柳枝
35 橘家円蔵
36 川柳川柳
37 金原亭伯楽
38 林家いっ平
39 三遊亭円歌
40 古今亭寿輔
41 桂歌丸
42 春風亭一朝
43 鈴々舎馬風
44 古今亭円菊
45 柳家小せん
46 鈴々舎馬桜
47 春風亭勢朝
48 林家木久蔵
49 五明楼玉の輔
50 橘家円太郎
「タイガー&ドラゴン」で落語指導&どん吉役の春風亭昇太は第6位。

いま、もっとも華やいだ落語家だ。独演会に行くと芸能人がたくさん来ていて、ああ、東京だとおもわせる落語家さんです。本人は静岡出身だけど。愛嬌のある狂気の落語を見せてくれる。

【浅草へ行く(前編)】
【浅草へ行く(後編)】
【浅草へ行く②(アリゾナ編)】

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